藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

公開された第二次中間報告書と、井崎流山市長の先延ばし宣言

流山市教委がいじめ重大事態について法令違反かつ不適切な対応を行った問題について、少し動きがありました。

流山市議会が市教委に対して、重大事態(平成29年に重大事態認定された事案)の第二次中間報告書の開示を請求したようで、このほど第二次中間報告書が開示され、共産党市議団のサイトで公開されています。もちろん個人情報に関する部分は非公開なので墨塗りの箇所が多く、墨塗りのあり方についても疑問は残りますが、市教委の対応の問題に関する記述はかなり公開されていますので、ご関心をお持ちの方はお読みいただけるとよいと思います。

第二次中間報告書が公開されているページは、こちらです。ファイルは二つに分かれており、その1はこちら、その2はこちらです。

特にお読みいただきたいのは、p.66からp.73にかけての「11. 学校及び市教委の対応に対する評価」のところです。特に、9.71からp.73にかけての「11.3. 重大事態としての対応に関する問題」については、市教委の対応がどのような意味で法令違反であり不適切なのかであることが端的に記されていますので、ご確認いただければ幸いです。

この部分の中に、「条例に従って第三者によって構成される調査委が調査にあたっていたと考えるのは当然のことである」という記述があります(p.72)。この箇所で主語にあたる部分が墨塗りになっていますが、「考える」の主語は被害者側であることは文脈からご理解いただけると思います。市教委は、第三者で構成される流山市いじめ対策調査会(以下、「調査会」)が調査を行っているという印象を、被害者側に与えたということが書かれているわけです。そして、第二次中間報告書ではこの点について「市教委からはこれに対応する説明はなされておらず、市教委は条例の規定に合わない事態が続いていることを認識していながら、あたかも認識していないかのように振る舞っていたものと解される」と指摘しています(p.72)。そして、「本件において、法令に従って義務を遂行するはずの市教委が法令に従った対応ができなかったことは、結果的に本件の深刻化、長期化につながる大きな要因となったと言える」とも指摘しています(p.72)。

この第二次中間報告書は、市教委指導課が確認の上で教育長に提出されたものです。すなわち、上記の第二次中間報告書の記述は、指導課も確認の上で確定したものです。少なくとも、本件が平成29年3月に重大事態認定されて以降の対応においては、指導課長をはじめとする担当者らは条例に従った対応ができていないことを認識していながら、あたかも条例に従って調査会が調査に着手しているかのように被害者側に説明していたわけです。

朝日新聞11月22日付千葉県版に、「流山市立小中学校のいじめ問題 「保護者説明 丁寧に」 県教委、市教委に指摘」という記事が載っています(この記事はネットには掲載されていないようです)。この記事では、県教委が今年6月に流山市教委に対して「調査についてしっかり保護者に説明をして欲しい」と指摘し、「年単位で報告が遅れたことを重く受け止め、公平公正な調査を速やかにまとめてほしい」と「懸念を伝えた」とされています。このことについて、流山市教委の西村指導課長は「調査委の立ち上げ方がよくわからなかった。反省点だ」と話したとのことですが、「よくわからなかった」という認識の問題でないことは第二次中間報告書からもご理解いただけると思います。平成29年3月から8月までの期間中、市教委の担当者らにはすでに法令違反の状況だという認識がありながら、被害者側を誤認させる説明を行っていました。問題は、「よくわからなかった」という認識でなく、誤認させる説明を行ったという行為にあります。県教委も、早く報告書をまとめることばかり求めず、市教委の対応にどのような問題があったのかを把握し、適切に再発防止や処分がなされるよう指導すべきです。

さて、第二次中間報告書では、最終報告書を待たずに市教委が必要な対応を行うことを求めています。平成29年12月に第一次の中間報告書が提出された後のことについて「その後、約1年半が経過しているにもかかわらず、市教委やB中学校は本件に関して、何がどのようにまずかったのか、具体的な見解を公表しておらず、また、再発防止策を公表することもしていない。調査委員会としては、こうした市教委、B中学校のあり方に強い疑問を抱くものである」と記しています(p.76)。「再発防止策の策定や実施が先送りされている中で、新たな被害が生じている恐れがある」とも記しています(p.76)。

ところが、市教委のみならず井崎流山市長までも、最終報告書を待って対応するという姿勢をずっと示しています。千葉日報の11月22日付の「トラブル対応の仕組み検討必要 いじめ問題で流山市長」という記事(有料会員限定記事はこちら)では、「最終報告書をみて判断したい」「報告書に改善策が盛り込まれれば、再発防止に取り組むように指示している」という市長談話を伝えています。第二次中間報告書では対応はせず、最終報告書を待つという先送りの姿勢がはっきりと出てしまっています。

第二次中間報告書の提出から、すでに6ヶ月が経過しました。市教委からは現在の調査会に対して引き継ぎをしてほしいという連絡を受けていますが、現状では引き継ぎの日程すら決まっていません。市長にも市教委にも、第二次中間報告書をふまえて対応を行う姿勢は見られず、ただひたすら時間だけが経過していきます。まるで、嵐が過ぎるのをじっと待っているかのようです。第二次中間報告書をふまえた対応を待つ理由など、全くないはずなのですが。