藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

乃木坂46の11年目とヴァルネラビリティ

【以下の文章は、3月2日に書いて3月4日朝に投稿予定っだったものです。3月3日に乃木坂46公式サイトにて中西アルノさんの活動自粛が発表されて状況が変わりましたが、この文章は変更せずに載せたいと思います。】

 

今夜は21時からネット番組「乃木坂白熱論争」に出演させていただくので、今日のブログはいつもと少し趣向を変えて、乃木坂46について書きます。エンターテインメントを教育に活かすことが私のライフワークなので、たまにはこのような記事を書くことをおゆるしください。以下、基本的に敬称略で書きます。

 

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乃木坂46が「ぐるぐるカーテン」でデビューしたのが2012年2月22日で、先日デビューから10周年を迎え、11年目に入りました。生駒里奈西野七瀬白石麻衣生田絵梨花といった1期生のセンター経験者がここ数年で次々と卒業するなど、グループの状況は大きく変わりつつあります。

 

乃木坂46の魅力を私なりに一言で言えば、「弱さゆえの強さ」ということだと思います。それらしい言葉を使うと、「ヴァルネラビリティ(valnerability)」があるということです。彼女たちは繰り返し弱さをさらけ出します。しかし、その弱さゆえに、さまざまなドラマが生まれ、負の意味合いをもっていたことがらの意味合いを変えてしまうという意味での強さを発揮することがしばしばあります。全盛期のAKB48の「公式ライバル」という位置付け、選抜とアンダーの分断、7時間半にわたる極寒の西武ドームでのライブ、AKB48ととのメンバー兼任、確実視されていた2014年のNHK紅白歌合戦の落選、46時間連続のネット番組生放送といった試練の中で傷ついたり疲れたり姿を見せながら、そうした試練をプラスに変えてグループを成長させる力を発揮し続けてきました。

 

そうした中で、乃木坂46の特徴としてよく挙げられるようになったのが、メンバーの仲の良さでした。メンバーたちがよく、他のメンバーのことを「こんなにいい人たち」というような言い方をします。彼女たちはグループ内の役割は違っても、数々の試練の中で互いの弱さを認めながら支え合う関係を築いているのだと感じます。

 

ここ数年は、そうした運営側等から与えられる試練より、中心メンバーの卒業、メンバーの多忙さ、そしてコロナ禍での活動の制約といった別の要因が、試練となっていたように思います。11年を迎えた今、10年前とはガラッと変わってしまったメンバーでどのようにして乃木坂46としての活動を続けていくのかが課題になっていることは間違いありません。

 

このタイミングに向けて、運営側は打てるだけの手を打ってきたように思います。3期生や4期生が活躍する場を設けるとともに5期生のオーディションを進めつつ、10年の集大成で昨年末にベストアルバムを出して生田絵梨花新内眞衣の卒業ソロ曲を収録し、10周年のタイミングで5期生と新曲を披露しています。歴史的倍率のオーディションを勝ち抜いた5期生たちはそれぞれ魅力的で、新たな乃木坂46が始まることを期待させます。お披露目からすぐに新曲センターを務める中西アルノは抜群の歌唱力を誇り、パフォーマンスも堂々としています。

 

今、この中西アルノのセンター起用については、否定的な意見も多く出ています。彼女のデビュー前のネット発信等について詮索したり、彼女がかつての欅坂46平手友梨奈に近い雰囲気があって曲も欅坂46みたいだという議論があります。

 

このように一筋縄ではいかないところが乃木坂46らしいと感じますし、乃木坂46という場がこうした問題をどのように昇華していくかに注目したいと思います。今、もしかしたらグループ内は大変な状況になっているのかもしれませんが、私は5期生が入った乃木坂46をこれから見ることが楽しみです。