藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

内閣府「令和3年度 ⻘少年のインターネット利用環境実態調査」の注目ポイント

先日、内閣府より「令和3年度 ⻘少年のインターネット利用環境実態調査」の結果の速報が発表されました。

 

www8.cao.go.jp

 

この調査は、青少年のインターネット利用に関する政策の基礎となるデータを毎年とっているものですので、注目していただきたいと思います。

 

私が毎年特に注目している箇所は以下の通りです。

 

1)スマホ利用率

2)インターネット利用目的

3)インターネット利用時間

4)フィルタリングの利用率

 

今回の結果では、以下のようになりました。

 

1)スマホ利用率については以下のグラフの青い線を見るとわかるように、小学生、中学生、高校生いずれの段階でも大きな変化はありません。スマホ利用率増加の勢いが止まりつつあることがわかります。

 

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2)インターネット利用目的については、「投稿やメッセージ交換をする」が減り、「検索する」「勉強をする」が大きく伸びています。文字中心のSNSの利用にブレーキがかかっていることと、学習目的の利用が増えていることがうかがわれます。「音楽を聴く」や「漫画を読む」も増えていて「動画を見る」も増えていることから、文字から音声・画像・動画へのシフトが進んでいることがわかります。

 

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3)インターネット利用時間では、学習時間が大きく伸びていることがわかります。他方、趣味・娯楽の時間も大きく増えていて、保護者・友人等とのコミュニケーションの時間も2年間低めだったのがまた増えています。コロナ禍で外出等が制限され、学習だけでなく他の目的も含め、インターネット利用時間が増えたことがわかります。

 

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4)フィルタリングの利用率はスマートフォン普及以降かなり低くなっていたのですが、ここ数年少しずつ上昇しており、今回もある程度上昇しました。

 

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以上から言えることは、やはりコロナ禍の影響でインターネット利用時間が増え、特に学習での利用時間が大きく増えているということが特筆すべきことで、他には大きな変化はないということです。一言加えるとすれば、文字によるコミュニケーションから音声・画像・動画へというシフトが見られますので、今後こうしたシフトが進んでいくのかには注意をしていきたいと思います。

 

なお、この調査の結果については、企画分析会議メンバーの竹内和雄先生(兵庫県立大学)がすでに以下の記事を発表されています。

 

news.yahoo.co.jp

 

竹内先生が指摘されているように、長時間利用や乳幼児期からの利用については要注意であり、子どもや保護者と教育関係者等が議論していくことが必要です。なお、当初はスマホ所持率が大きく伸びているかのような記載があったのですが、上に書いたようにスマホ利用率はむしろ増加が止まりつつある状況です。この点については修正されていますので、ご注意ください。