藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

警察庁「非出会い系サイトに起因する児童被害の事犯に関する調査分析について」に関する見解

 twitterに書いたものをこちらに転載します。

警察庁から本日、「非出会い系サイトに起因する児童被害の事犯に関する調査分析について」という広報資料が発表されました。資料はまだウェブに掲載されていないようですが、報道が出ていますので、この発表についての私の見解を、以下、連続ツイートします。

非出会い系(1)被害児童のうちフィルタリング加入が確認できた者は1.5%。フィルタリングをかければ、監視の甘いサイトへのアクセスできない。また、関心が高い保護者ほどフィルタリングをかけると考えれば、フィルタリング非加入の場合、保護者の関心が低い可能性もある。

非出会い系(2)デフォルトでフィルタリング対象外でのEMA認定サイトの被害は約半数。しかし、フィルタリング加入者がEMA認定サイトで被害に遭ったケースはほぼない。主要サイトがフィルタリング加入者は18歳未満とみなす措置をとっていることの効果もあるだろう。

非出会い系(3)監視が厳しいEMA認定サイトから甘いサイトに移ってコミュニケーションするケースが多いと考えられるが、フィルタリングがかかっていれば、甘いサイトには移れない。

非出会い系(4)約6割の被疑者がミニメールを利用しており、直メアドレスを伝える際にミニメールを使った割合や約95%。ミニメールが被害につながっていたことは明白。今春の総務省研究会の報告後、主要サイトがミニメール監視に取り組み始めており、今後の効果が期待される。

非出会い系(5)被疑者の約7割が児童との性交目的を犯罪動機としている。明白な目的をもった者がサイトで大量に児童に対するメッセージを送り、返信があった者と会おうとすることがうかがわれる。

非出会い系(6)被疑者の5割近くがプロフィールを詐称。そのほとんどが年齢を詐称している。大人が子どもになりすませないようにすることが重要。携帯電話会社からサイト事業者への年齢情報の提供が検討されており、実現すれば効果が期待できる。

非出会い系(7)他方、児童の側の詐称は約15パーセントで年齢のみの詐称であれば1割程度。児童が大人になりすますことも危険ではあるが、児童側の年齢詐称を抑えても犯罪を減らすことに大きく貢献できるとは言えない。

非出会い系(8)児童が被疑者と会った理由で「お金・品物を得るため」は2割。児童買春事案が少なく、淫行や深夜外出違反が多いこととも整合する。猥褻なことをしようとする意志のない児童が多く被害に遭っていることとなり、児童買春とは異なる深刻さがうかがわれる。

非出会い系(9)被疑者が被害児童を選んだ理由として挙げているトップが「メールの返信が来たから」(34.9%)。安易に返信することの危険性を子どもに理解してもらう必要がある。

非出会い系(10)隠語を使っていた被疑者は6.4%。隠語の監視をかいくぐって出会う例は少ない。直メアドレス等が直接やりとりされて事件に結びつくケースが大半。隠語ばかりに注意を奪われるのはまずい。

非出会い系(11)親からの注意を受けていない被害児童は約4分の3。その中に「ゲームサイトと親に話していたので注意をうけたことはない」が19件。家庭内コミュニケーションは当然重要であり、交流サイトを単なる「ゲームサイト」と誤認させるのはまずい。

非出会い系(12)被害児童のインターネット利用経歴は約4割が半年以下。一概には言えないが、初心者がフィルタリングなしで使っていれば危険なのはある意味では当然。

非出会い系(13)警察庁は今後の対策として「フィルタリングの普及徹底」「ミニメールの監視体制拡充の促進」「実効性のあるゾーニングの促進」の3点を挙げる。それぞれ、総務省WG等で検討中、ほぼ実施中、安心協で検討中。警察庁の今回の分析で、対策の方向性は確認された。

以上、警察庁が本日発表した「非出会い系サイトに起因する児童被害の事犯に関する調査分析について」についての連続ツイートでした。これまで非出会い系サイト関連事件について件数しか公表していなかった警察庁がこのように詳細な分析をし公表したことは、大変ありがたいと考えています。