藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

学校での生成AI活用について、今、考えていること

ブログに投稿することが久しぶりになってしまいました。この1年近く、文部科学省の「学校DX戦略アドバイザー」に任命いただいたこともあり、学校での生成AI活用について関わる機会が多くなり、このところ講演の機会が何度かあったので、現時点で考えているこ…

教員の働き方改革を確実に進めるために何が必要か?

教員の働き方をめぐる議論がいろいろと聞こえてきます。私は3月まで附属中学校の立場で、中学校の教職員とともに働き方改革に取り組んできました。そうした経験も踏まえ、働き方改革を確実に進めるには何が必要か、考えを書かせていただきます。 まず多くの…

企業教育研究会20周年で、なぜ「教育をアップデート」なのか

2023年度、私が理事長をつとめるNPO法人企業教育研究会は、20周年記念イベントとして、7回連続セッション「#日本の教育をアップデートする」を開催します。 ace-npo.org 企業教育研究会がNPO法人としてスタートしたのは、2003年3月。当時、私の研究室に所属…

ChatGPTに教育行政は追いつけるのか?

ChatGPTなどの生成AIの性能が高く、ものすごい勢いで広がっています。 ChatGPTを使えば小学生の読書感想文などはもちろん、大学の授業のレポートなども容易に書けてしまうので、これまでの教育のやり方はそのまま通用しなくなります。文部科学省はChatGPT等…

「ゴロ野球」の実践に学ぶ、参加としての特別支援

私の研究室の名称は、「授業実践開発研究室」。私は大学院生時代から「授業づくり」を主なテーマに研究をしており、2001年度、千葉大学大学院教育学研究科修士課程に授業づくりをテーマとした「カリキュラム開発専攻」が設置されたタイミングで千葉大学に採…

私たちはデジタル・シティズンシップ教育をどのように論じるべきなのだろうか?

デジタル・シティズンシップ教育について調べていたら、坂本旬さんが私の文章を引用して議論してくださっていたことを知りました。 note.com 坂本さんのこの記事は2021年4月22日のものなので、1年半も経過していたことになります。気がつくのが遅く、申し訳…

子どもの意見表明権とアドボカシー教育

千葉大学教育学部附属中学校では、大学と連携した授業がいろいろと行われています。その中で、ゼミ制で実施している全校の総合的な学習の時間の中に、大学院生の郡司日奈乃さんらが担当している「アドボカシー」ゼミがあります。「アドボカシー」とはもとも…

講演「いじめに対応できる学校づくり」資料

このほど、帯広市教育委員会よりご依頼をいただき、「いじめに対応できる学校づくり」をテーマに、小中学校の教員等の方々を対象に講演をさせていただきました。 これまでもいじめ対応について講演をさせていただくことはありましたが、コロナ禍で講演を控え…

外国から来た児童生徒を「発達障害」としてしまう状況をどう変えるのか

6月18日(土)、私たちの研究室、NPO等が主催する研究会である「千葉授業づくり研究会」が第150回となる節目となる回を開催しましたた。講師に『「発達障害」とされる外国人の子どもたち』の著者である金春喜さんをお招きし、外国から来た児童生徒の教育に関…

「教師不足」の解決には、「特別免許状の積極活用」でなく、正規採用教員を2001年度並みに戻すことが必要だ

ようやく「教師不足」が広く認知されるようになり、末松文科相が国会で、特別免許状の積極活用を進めることを表明し、「あらゆる手段を講じて教師の確保に取り組んでいただきたい」と話しました。 www.kyobun.co.jp 特別免許状を乱発しても、教員免許をとっ…

「民主主義の理想」を私たちはどう考えればよいのか?

昨日、第148回千葉授業づくり研究会にて、朝日新聞論説委員の沢村亙さんのお話を聞き、ウクライナ危機をはじめとする緊迫した国際情勢に子どもたちとともにどのように向き合うか、議論しました。 ace-npo.org 沢村さんは、ニューヨーク、ワシントン、ロンド…

旭川いじめ事件 三つの論点

旭川市の中学生がいじめを受けた案件で、昨日、調査委員会がいじめの認定について中間報告を行い、多くのメディアで報じられています。中間報告の全文は、以下に掲載されています。 news.yahoo.co.jp 私も取材を受け、北海道文化放送と北海道新聞でコメント…

取手市いじめ問題専門委員会委員長退任にあたって

今年3月31日の任期満了をもって、取手市いじめ問題専門委員会の委員長並びに委員を退任させていただくことになりました。退任にあたって、これまでのことなどをブログに書いておこうと思います。 取手市いじめ問題専門委員会は、2018年4月1日に施行された「…

熊本市教育長の遠藤洋路さんの新刊『みんなの「今」を幸せにする学校』を勝手に推薦します

発売されたばかりの遠藤洋路『みんなの「今」を幸せにする学校』(時事通信社)が届いたので、一気に読みました。 遠藤さんは、熊本市教育長。元官僚で、若くして退職されて会社を起こし、そして熊本市教育長に就任された方であることをこの本で初めて知りま…

「オタク力」から見る、汎用的能力ばかりを追うキャリア教育への疑問

昨日3月31日、千葉大学教育学部授業実践開発研究室(藤川研究室)の研究紀要『授業実践開発研究』第15巻が完成し、インターネット上で公開となりました。千葉大学附属図書館のリポジトリへの掲載や冊子の印刷は少し先となりますが、現在は研究室論文集サイト…

オタク力と越境学習を結びつけてみる

「オタク力」に関する論文を掲載したばかりですが、本日先ほどまで、「オタク力」研究チームのオンライン・ミーティングがありました。だいたい月に1回、チームでのミーティングを行っています。 今日のミーティングで見舘好隆先生から教えていただいた石山…

「ウクライナ危機 児童生徒と対話する際の8つのポイント」を書きました

先日、教育新聞の連載で、「ウクライナ危機 児童生徒と対話する際の8つのポイント」という文章を書かせていただきました。 www.kyobun.co.jp ウクライナへのロシアによる侵攻について、日本にいて教育で何ができるかというと大変心許ないのですが、児童生徒…

論文「『オタク』概念の意味論的検討」を暫定公開します

このほど冊子ができた千葉大学教育学部研究紀要第70巻に、藤川大祐・渡邉文枝・見舘好隆・小野憲史「『オタク』概念の意味論的検討」が掲載されました。 いずれ千葉大学図書館のリポジトリに掲載されるはずなのですが、まだ掲載されいていないようですので、…

「アンダーライブ」の逆説的な可能性

乃木坂46というグループは40名前後のメンバーがいて、うち20名程度が「選抜メンバー」、残りが「アンダーメンバー」となっています(入ったばかりのメンバーはどちらにも入らなかったりします)。以下、敬称略で。 2012年のデビューからしばらく、アンダーメ…

小学校図書館向け図書「考えよう!話しあおう!これからの情報モラル」全4巻ができました

これまでも毎年のように小学校図書館向けの書籍の監修をやらせていただいていますが、このたび、監修させていただいた偕成社の「考えよう!話しあおう!これからの情報モラル」全4巻が完成し、先日発売となりました。 www.kaiseisha.co.jp 監修というと名ば…

日本教育工学会発表資料「キャリア関連諸能力と『オタク力』との関係」

3月19日(土)〜20日(日)にオンラインで開催されている日本教育工学会 2022年春季全国大会において、渡邉文枝(早稲田大学)、見舘好隆(北九州市立大学)、小野憲史(東京国際工科専門職大学)の皆様との共同研究の一環として、「キャリア関連諸能力と『…

学校・保育所等のコロナ対策をもっと優先できないか

1月以降、コロナ感染者の増加が急激だった一方で、増加が止まって以降の現象は緩やかです。小中学校や幼稚園、保育所などで感染者が頻繁に出ており、インフルエンザのように子どもが媒介となって感染が広がり続けているのではないかと思われます。症状もイン…

多摩川スカイブリッジを歩いてきました

いろいろな場所を歩くのが好きなので、今回はそんな話題で。昨日、開通したばかりの多摩川スカイブリッジを歩いてきたので、その話を書きます。 スタートは、東京モノレールの羽田空港第3ターミナル駅。以前は国際線ターミナルと言われていた第3ターミナルの…

ランダム性を取り入れたデザイン論に向けて

愛読させていただいているPLANETSのメールマガジンの今日の号に興味深い記事があったので、忘れないようにここに書いておきます。落合陽一さんによる「マタギドライヴ」の連載の最終回です。 wakusei2nd.com そもそも「マタギドライブ」って何というのはこの…

明治図書『授業力&学級経営力』誌で連載「教育問題24時」スタート

2022年度、明治図書『授業力&学級経営力』誌で、「教育問題24時」という連載をさせていただくことになりました。 www.meijitosho.co.jp このほど、4月号の掲載誌が手元に届きました。第1回となる4月号のテーマは「学校における働き方」。制度面での紹介も含…

東日本大震災から11年経って思うこと

東日本大震災の発生から11年が経ちました。あらためて私なりの視点で当時のことを、当時のブログ記事をたどりながら振り返ってみたいと思います。 震災発生直後に私がしていたことは、首都圏にいながら何ができるかを探ることしかありませんでした。まずは、…

大学×企業×NPO×附属学校連携による特別授業を実施しました

千葉大学大学院教育学研究科には実践的な授業が多くありますが、中でも特徴的なのが附属学校と連携した実践的な授業です。教育系の学部等をもつ国立大学には基本的に附属学校がありますが、多くは所在地が大学と離れた場所です。しかし、幸いなことに千葉大…

福島市長及び福島市議会は問題あるいじめ条例をそのまま放置するのか

各地の教育委員会がいじめ防止対策推進法などに反する対応をして問題になるケースが、後を絶ちません。最近では、福島市で、小学生(当時)がいじめを受け不登校になった問題で、福島市教育委員会の対応に問題があり、調査委員会が報告書で市教委の対応や学…

18歳成人制スタートであらためて注目したい消費者トラブル問題

今年4月から、成人年齢が引き下げられ、18歳から成人となります。当事者たちが特に望んだわけではないのに、高校生なら多くの人が卒業前に「大人」ということになってしまいます。酒やタバコは20歳以上でないと認められない一方で、契約については一人前とな…

内閣府「令和3年度 ⻘少年のインターネット利用環境実態調査」の注目ポイント

先日、内閣府より「令和3年度 ⻘少年のインターネット利用環境実態調査」の結果の速報が発表されました。 www8.cao.go.jp この調査は、青少年のインターネット利用に関する政策の基礎となるデータを毎年とっているものですので、注目していただきたいと思い…