藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

教員の働き方改革を確実に進めるために何が必要か?

教員の働き方をめぐる議論がいろいろと聞こえてきます。私は3月まで附属中学校の立場で、中学校の教職員とともに働き方改革に取り組んできました。そうした経験も踏まえ、働き方改革を確実に進めるには何が必要か、考えを書かせていただきます。

 

まず多くの方に知っていただきたいのは、残業手当を出さない代わりに4%相当の教職調整額を給与に上乗せする給特法の規定は、公立学校にしか適用されないということです。すなわち、私立・国立の学校では、残業が生じればそれに応じた残業手当を支給することが必要です。といっても、少し前までは、この辺りが曖昧でした。国立について言えば、法人化以前には給特法が適用されていたということもあり、公立学校と同様に4%相当を給与に上乗せする代わりに残業手当を出していないところが多かったのではないかと思います。

 

しかし、最近になって国立学校でもきちんと残業手当を払うことが当然となりつつあります。このため、国立学校ではかなり本気で働き方改革を進めることが必要となってきました。

 

では、どうするか。重要なことは、必要なことは基本的にすべて勤務時間の中に入れるようにするということです。そうしなければ、勤務時間からはみ出た分がすべて手当の対象となって、人件費が大変なことになります。とはいえ附属学校は教育実習指導もあり、毎日の業務を常に8:00-16:45の勤務時間におさめることは非現実的です。ですので、まずは労使協定で変形労働制を導入し、繁忙期は勤務時間を+1時間、余裕のある時期には勤務時間を-1時間とする措置をとります。その上で、次のようなことが必要となります。

 

・部活動は朝練なし、平日は週3回までで16:45まで。

・職員会議などの全員出席の会議は勤務時間内に終える。(そのために会議の準備をしっかり行う。)

・テスト問題の作成や採点などに時間が必要な時期には、そのために放課後に部活動や会議等を入れない日を設ける。

・少人数の定例の会議は、時間割を調整して、毎週の時間割の中に入れる。

 

他方、突発的な生徒指導等で時間外の対応が必要な場合には、必ず時間外手当を支給するようにします。

 

こうしたことをしながら、何が時間外にはみ出るのかを確認し、勤務時間内に入れる方法を考え、どうしてもはみ出る分については残業手当の対象とするしかありません。たとえば、中学校3年生の進路業務については、どうしても残業が多くなるのが現状です(高校入試に関する業務はそれだけ中学校教員の負担となっています)。

 

公立学校の状況を聞いていると、業務を基本的に勤務時間内に入れるという発想がそもそもないことを感じます。勤務時間外に朝練やら部活動やら会議やらが普通に入っているようですし、授業準備等に使える空き時間が全然足りない状況もあるようです。それでいて、実働時間を減らすという掛け声はかかっているので、多くの教員が持ち帰れる仕事は持ち帰って、見た目の実働時間を減らすということになっているのではないでしょうか。

 

教員の働き方改革について私が特に強調したいのは、次の3点です。

 

・同じ職種であるはずの学校教員について、公立には給特法があり、国立・私立にはないというのは異常です。法の下の平等に反するのではないでしょうか。

働き方改革を実質的に進めるには、学校設置者(教育委員会等)や校長が、必要なことはすべて勤務時間内に入れることを覚悟するしかないはずです。これまでの慣例にとらわれず、考え方を変える必要があります。

働き方改革に関する指標として、実働時間(在校時間)ばかりを見ると、持ち帰り仕事が増えるだけになる恐れがあります。教員の満足度等の他の指標に着目する必要があるはずです。

 

こうした点を踏まえて、対応を進めていただけることを切に願っています。

 

(追記)

1点書き忘れていました。いろいろと工夫しても、毎日6時間の授業を入れて、他の業務を勤務時間内に入れるのはかなり厳しいです。新年度当初の準備時間が短いという別の問題も踏まえ、学校の授業が現状で基本的に年間35週分であるのを33週分くらいに減らせるといいなと思います。4月の開始を4月10日くらいにして余裕をもって準備できるようにするとともに、午前授業の日を年間10日くらい増やして、教員が授業以外の業務に専念できる時間を捻出するのです。夏休みでいいではないかと思われるかもしれませんが、夏休みはまとまった会議や研修をする必要もありますし、有給休暇をとりやすくすることも必要なので(専任の教員に法的義務である年間5日の有給休暇をとってもらうのも大変です)、夏休みにできることは限られます。