藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

企業教育研究会20周年で、なぜ「教育をアップデート」なのか

2023年度、私が理事長をつとめるNPO法人企業教育研究会は、20周年記念イベントとして、7回連続セッション「#日本の教育をアップデートする」を開催します。

 

ace-npo.org

 

企業教育研究会がNPO法人としてスタートしたのは、2003年3月。当時、私の研究室に所属していた学生たちが、企業と連携した授業づくりを進めるためには法人格が必要だと考えて組織を作ったことが始まりでした。千葉大学からはさまざまなスタートアップ企業が生まれていますが、企業教育研究会も千葉大発のスタートアップ企業の一つです。その後、文部科学省のキャリア教育事業を受託したり、さまざまな企業との連携で授業づくり・教材づくりを進めたりして、今では10名ほどの専従職員を雇用する法人となっています。

 

当時から私たちが掲げた目標が、「誰もが教育に貢献する社会」を作ることでした。この20年の間に、間違いなく企業による教育への貢献は進みましたし、企業教育研究会としても多くの学校に、学校が求めている教材やプログラムを届け続けてきました。その成果は、決して小さくないと考えています。

 

しかし、20周年に向けて、竹内正樹事務局長を中心に法人としてのあり方を議論する中で、私たちは、果たしてこのレベルで満足してよいのだろうかと自問自答しました。私たちは、たとえ学校にお金がなく教員に余裕がなくても学校が新しい取り組みをできるようにと、社会の変化に伴って必要と考えられる教材やプログラムを学校に届けてきたつもりです。でも、この20年の間に、学校をめぐる状況はどんどん厳しくなり、学校が柔軟に新しい内容の授業を取り入れることが難しくなってしまっています。私たちには、もっとやれることがあるのではないか。私たちは考えました。

 

2023年度、私たちは20周年企画として、産学官連携で、重要な教育課題について多くの方々と情報交換、意見交換をすることにしました。この連続企画が突破口となり、学校が、多様な人々の協力を得て、新しい取り組みを進めることができるように、学校を、社会を変えていきたい、と考えています。

 

連続企画の第一弾は、本日4月22日(土)14時から、千葉大学教育学部にて開催です。テーマは「#起業家教育」。2010年度から千葉市千葉大学では連携して「西千葉子ども起業塾」を開催しており、今では「ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアム Seedlings of Chiba」に多くの主体が集って起業家教育を進めています。そして、企業教育研究会は、アクセンチュア、Seedlings of Chibaなどと協力して、中学生向け起業入門プログラム「ひな社長の挑戦」を開発し、全国の学校等に教材の無料配布を始めています。

 

ace-npo.org

 

本日の企画第一弾では、千葉市の神谷俊一市長に特別スピーチをいただき、アクセンチュアの藤井篤之さん、文部科学省の加藤浩介さん、中小企業庁の宮本祐輔さん、千葉大学IMOの片桐大輔さんに、産官学それぞれのお立場から起業家教育の最先端のお話をうかがいます。そして、会場の皆様とともに、情報交換、意見交換を進めていきます。

 

起業家教育は、起業する人を増やすための教育というより、子どもたちがエージェンシーを発揮できるようにするための教育であると、私は考えています。「エージェンシーのダンス」という言葉がありますが、起業(擬似)体験の中で、子どもたちがエージェンシーを解放し、新しいことを進めようとする大人たちとともにダンスをすることで、エージェンシーが発揮される体感を獲得することが、私の考える起業家教育です。今日は、そんな話もできたらと思っています。

 

連続企画は4月から12月まで(8月・9月を除く)、毎月1回、産官学からさまざまな方々をお招きして実施する予定です。皆様とお目にかかり、議論できることを、楽しみにしています。