藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

日本テレビ「スッキリ!!」でのコメントの扱いについて(2)

 3月7日(月)放送の日本テレビ「スッキリ!!」で藤川のコメントが不当に扱われた問題に関して、昨日(8日)に日本テレビにメールを送信した件、本日(9日)17時近くに担当プロデューサーより電話をいただきました。

 真摯に謝罪の言葉を述べていただき、「うかがって事情をご説明したい」と言ってくださいましたが、いらしていただくことはお断りしました。ご説明は、公開できる形で文書でいただきたいですし、謝罪でなく名誉回復を求めたいとお話ししました。

 私は、日本テレビについてはこれまでのおつきあいの中で感謝もしていますし、信頼もしていたつもりです。2000年に私たちは「メディアリテラシー教育研究会」を発足させ、多くの方々のご協力をいただきながら授業や教材の開発を進めてきました。当初から、日本テレビメディアリテラシー担当の方が私たちの活動に強く共感してくださり、カメラの方、営業の方、アナウンサー、マーケティングの方、スポーツ担当の方等、多くの方を研究会の講師にご紹介いただきました。また、日本テレビメディアリテラシー番組「メディア・マガジン」にはずっと関わらせていただき、大学生が小学生とともにビデオを作ったり、番組の裏側を見させていただいたりと、大変お世話にもなりました。千葉大学の授業「メディアリテラシー教育」にもご協力いただき、プロデューサーの方にお話をいただきました。私たちのメディアリテラシー教育に関する取り組みを支えてくださった大きな柱が、日本テレビの方々でした。

 私なりに日本テレビに貢献させていただいた自負もあります。特に、2003年に発生した視聴率操作問題をめぐって、信頼回復策の一つとして取り組まれた視聴者による番組制作の企画では、私がまとめ役のような立場で関わらせていただき、視聴者代表の方々と繰り返し議論を重ね、番組企画を作るお手伝いをさせていただきました。

 Twitterで多くの方々からリプライをいただいた中に、制作側があらかじめ定めたストーリーの中に研究者のコメントを入れ込もうとするところに無理があるとか、コメントが恣意的に編集されてしまうといったご指摘が多くありました。もちろんこうしたことは問題ですが、報道番組や情報番組ではどうしてもそうした作り方が必要な部分はあるとも考えられます。私としては、そのようなレベルのことを問題にしたいのではありません。

 今回、私は、手軽にネットに頼る行為とカンニングとの関係は短絡的にとらえられてはならない、ネットが普及して私たちの感覚は変わりつつあるが、ネットを利用すること自体はよいことである、ただネットを通して他人に頼ることに依存してはまずい、という見解をもってコメント収録に臨みました。コメントの一部が切り取られ、編集されることは覚悟の上で、ネット利用自体を否定しないこと、過度に単純に問題をとらえられることがないよう配慮して、発言したつもりです。しかし、私のコメントにつけられたナレーションが、あたかも私が短絡的にネット利用の害悪を指摘しているかのような誤解を与え、司会者からは「短絡的」と言われ、コメンテイターからは「馬鹿な議論」「おかしいんじゃないかと思う」などと非難されました。

 ある程度番組の構成を考えながら、担当者は取材を進めるでしょう。そして、構成に合うようにコメントをとろうとするでしょう。ここまでは必要なことです。しかし、実際に得られたコメントが予測と異なるものだった場合には、当然、番組の構成を修正しなければならないはずです。今回の場合で言えば、コメント収録が前日の夕方17時過ぎでしたから、放送までに番組の構成を修正する余地は十分にあったはずです。ナレーションを私の話の内容に合わせたものに調整することができなかったはずはありません。

 番組の中でコメンテイターの一人が、「今朝の打合せでこの話題はもうやめようと言った」と発言していました。司会者も、「ネットで検索しやすくなったからカンニングにつながる」ということを否定的にとらえていました。当日放送前の打合せでも、番組内容を修正する必要が明らかになっていたことがうかがわれます。

 日本テレビは、このような状況でも、番組の構成を修正することができない体制で放送を出しているのでしょうか。もしそうだとすれば、危なくてコメントなどできません。不適切な放送になりそうなときに、修正する体制がとれないのでしょうか。これまで日本テレビと関わらせてもらってきた立場としては、そのような体制をとってほしいと期待したいところです。

 私の意見は、むしろ番組司会者やコメンテイターに近いものでした。少なくとも、お二人には私の意図をご理解いただきたいと考えています。その上で、司会者やコメンテイターには、数百万人に向かって「短絡的」「馬鹿な議論」「おかしいんじゃないか」と不当に非難したことについてのご発言をうかがいたいものです。

 多くの方から、「スッキリ!!」で言われていましたね、と言われています。Twitterでも指摘されました。メディアリテラシー教育を研究する研究者として、メディアの利用について非難されるような発言をしたという印象を多くの方に与えたことは、研究者として大きな被害を受けたということなのだと思います。今後も日本テレビには、私の名誉回復をどのように考えていただけるのか、問うていきたいと思います。