藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

地震から4日目を迎えて、テレビ各局へのお願い

 地震から4日目を迎え、新しい週が始まりました。首都圏では停電のアナウンスや交通の乱れで混乱を迎えています。しかし、徐々にいろいろなことが見えてきたのも事実です。

 テレビ局でも、通常の番組を中心とした編成が見られるなど、緊急の対応から今後の復旧・復興に向けた対応へと、取り組みが変わってきていると考えられます。

 テレビ局の方々も、ここまで大変な苦労をされ、対応を進めてこられたことと思います。また、民放各局では、大幅なCMカットで経営的にも大きなダメージを受けられているかもしれません。

 しかし、ここは正念場です。今、テレビの影響力は大変大きくなっています。テレビが、被災者ひいては国民をどれだけ元気づけられるかが、問われています。

 以下、メディアリテラシー教育を研究してきた教育研究者の立場から、いくつかの提案をさせていただきます。ご検討いただければ幸いです。どうか、よろしくお願いいたします。

1.今後の放送の方針を発表してください。

 各局内では今後の放送についての方針を検討されていることと思います。もちろん、まだ大きな余震の可能性もあり、電力供給が不安定でもあるので、はっきりしたことを発表することはできないかもしれません。しかし、たとえば、次のようなことを方針として定め、発表いただければ、視聴者はどれだけ安心できるかわかりません。方針の内容についての意見は2以降で述べます。

2.悲惨な映像の放送を控えてください。

 地震関連番組において、他の話をしているときにバックに津波被害の映像が流されることが見られます。また、これまでの経緯を振り返る中でも、悲惨な映像が繰り返し流されています。多くの人が恐ろしい経験をし、今も不安を抱えている中で、悲惨な映像が精神に及ぼす影響が懸念されます。9・11テロ事件の後も、ある時期からあとは悲惨な場面の映像の放映が自粛されたと記憶しています。当面、津波被害等の悲惨な映像の放送を控えてください。仮に津波被害等の映像を使う必要がある場合には、事前にしっかり予告し、放送中も字幕で注意を促すようにして、見たくない人が見ないように配慮してください。

3.基本的に通常編成に戻してください。

 恐怖や不安を経験した子どもたち、さらには大人を含むすべての人にとって、これまでと同様にアニメ、音楽、教養、お笑い、ドラマ等の番組が放送されることは、それ自体が大きなプラスと考えられます。すでにいくつかの局が通常編成に戻りつつあるようですが、はっきりと宣言して、通常編成に戻していただければと思います。ただし、この状況で放送するのは不謹慎と思われる番組もありえますので、そうした番組については早急に検討し、差し替えをお願いします。また、地震情報をまとめて放送する番組が定期的にあればありがたいと思われますので、地震関連番組の放送予定を確立し、繰り返し伝えてください。もちろん、新たな事態が生じたら、従来と同様に、ニュース速報を出したり、臨時番組に切り替えたりすることは必要です。

4.無責任なバッシングを排除してください。

 大変な状況の中で政府や電力会社をはじめ多くの方々が事態への対応を進めておられます。報道に批判的な視点が必要なのは当然ですが、事前に予測不可能な理想的な状態を基準として非難しているとしか思われないバッシングも見受けられます。すべてが初めての事態で、ほとんどが想定を超えているのですから、最初から完璧な対応ができるはずはありません。政府等の対応を批判する番組・コーナーは限定し、無責任なコメンテイターなどは置かずに、冷静に議論ができる専門家と冷静に進行できるアナウンサーやキャスターだけの出演にとどめてください。くれぐれも、毒舌が売りの出演者が、政府等への不満を煽るような言動をしてはならないと考えます。

5.ネットからの情報に積極的に対応してください。

 一部テレビ局ではTwitter等を活用して対応されていることがうかがわれますが、多くの局はネットからの情報に無頓着であるように見受けられます。ネットでは現場からの貴重な情報、この事態に対応するためのさまざまな知恵、外国からの励まされるメッセージ等が多く流れています。しかし、テレビでなければこうした豊かな情報は多くの人に届きません。各局で番組宛、局宛のメッセージをどしどし受け付けることはもちろんですが、Twitter公式アカウントを設けて担当者が積極的にネットで情報収集を進める等して、ネットで流れている情報を有効に活用して今後の番組に活かしてください。(教育に関して言えば、教師や保護者の方から切実な悩み、前向きな取り組み等が多く発信されています。テレビ局の記者の方々の取材だけでは見えないものが多く見えるはずです。)

(以上)