藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

小学校6年生が手描きアニメーションを作る授業

 昨日12月19日、東京の練馬区石神井東小学校にうかがい、6年生の総合的な学習の時間の授業を見ました。この授業は、練馬区の「アニメ産業と教育の連携事業」の一環として実施されたもので、私はこの事業の監修をつとめさせていただいています。

 昨日の授業では、2クラス50名弱の子どもたちが8つのグループに分かれて作成した10秒間の手描きアニメの発表が行われました。どのグループもキャラクターを工夫し、アニメーションらしいなめらかな動きを取り入れて素敵な作品を作ってくれました。

 授業後にミニ講演をさせていただきましたので、その場で書き足した内容も含め、レジュメを以下に掲載しておきます。

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アニメーションをつくる授業に寄せて

2011.12.19 藤川大祐(千葉大学教育学部教授、NPO法人企業教育研究会理事長)

1 本日の授業について

・「この先どうなることやら」から、傑作に至る。(奇跡!)…「子どもたちが大人になった」(壷坂先生)

・想像力の基礎としての「みなし」。「命をふきこむ」こととしてのアニメーション。

・手描きアニメの困難さと価値。(コマ撮りアニメと違う魅力)

・絵本や紙芝居とは違うアニメの魅力。動きや凝集性。

・ファンタジーと、時間・空間を分析する科学的思考(観察眼)。

・キャリア教育の観点から見れば、狭義の「コミュニケーション能力」とは異なる、ものづくりの力や協力してプロジェクトを進める力。

・アニメの仕事を目指すだけでなく、アニメづくりの体験を活かした進路を目指してほしい。

・協力してもらったことから、利他的な態度/おもてなしの精神へ。

・子どもたちの「アニメを見る目」が育つ。(メディアリテラシー育成へのヒント)

・ICTの的確な活用(できなかったことをできるようにするために使う)。少しずつ道具の整備を。

・一つの手本ができたことで、今後、水準が上がることが期待される。(地域の文化へ)

・「完成!」のあとでさらに改善をはかる。

2 アニメーションの魅力

・語源は、ラテン語のanima(霊魂)。animal、animismと通じる。

・「森羅万象に神が宿る」という日本古来の感性

・アニメーションの基本は、1秒24コマの高速紙芝居

・リアリティ志向と、「みなし」の楽しさ

・日本アニメ発祥の地としての練馬

3 子どもがアニメーションをつくる

・「メディアの向こう側」を経験する

・1コマ1コマを作っていく「ものづくり」

・アニメーションでしかできない表現

・協力して一つの作品をつくる

・地域で働く人にふれ、地域に誇りをもつ

4 授業としてのアニメーションづくり

・図工・美術、総合的な学習の時間等で-「創造的に表現」「つくりだす喜び」「表現方法の特性」等

・コマ撮りアニメ、手描きアニメ、CG

・プロとのコラボレーションでしかできないこと

・科学の目で「動き」をとらえる

・学級づくり、自尊感情の涵養等も意識して

5 今後に向けて

・子どもがつくるアニメーションを、地域の文化に

・アニメーション業界と教育とが、ゆるやかに継続して連携協力を