藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

成績がよい子どもは総じてリア充〜全国学力・学習状況調査を読む

 全国学力・学習状況調査の報告書が公表されました。言えることは、点数が高い子どもは総じてリア充である、ということです。朝食を毎日食べ、規則正しい生活をし、家の人とコミュニケーションをとり、自尊感情規範意識をもっているわけです。家庭環境が安定していて、気持ちよく生活している子どもたちは、学習時間を確保でき、成績もよいのです。

 なお、興味深いのは、テレビ・ビデオ・DVD(ゲームを除く)の時間についてで、最も成績が高いのは「全く見たり、聞いたりしない」ではなく「1時間より少ない」であることです。全く見ない人は2〜3時間の人と同じくらいの成績です。一概に、メディア接触時間が少ないほど成績が高いとは言えないのです。メディア接触時間ゼロという人はそもそも少ないのでしょうが、安定した家庭ではメディア接触はほどほどということなのかもしれません。

 もちろん、家庭の状況だけで成績が決まるわけではなく、学校の教師の指導法も大きいようです。発表や話し合いの機会が多く、教師からよいところを認められ、学校に行くのが楽しいという子どものほうが、成績が高くなっています。これは、個々の要因が成績を押し上げているというより、授業に熱心な先生がいて、その先生とうまくやっている子どもは、成績が高い傾向があるということでしょう。一方向の因果関係でなく、成績が高いからこそ、教師にも認められ、学校が楽しくなるという関係もあるはずです。

 ということで、家庭でも学校でもよい状況の子どもは成績が高く、その子どもの成績がよいことで家庭や学校での状況もよくなるというように、正のスパイラルが描けていると全面的にハッピーであり、逆に負のスパイラルになってしまうと家庭でも学校でも恵まれず成績も悪いという状況になると考えられます。

 課題は、リア充と好成績のスパイラルには入れない子どもを助けることです。家庭や学校で条件に恵まれない子どもを支えることや、成績がふるわない子どもが家庭や学校でさらに悲惨になることがないようにすることが、必要ということではないでしょうか。

 今回、携帯電話やスマートフォンの利用時間と成績との関係が取り上げられており、この件で取材を受けました。「スマホなどの利用時間が長いと成績が低い」ということなのですが、スマホの利用時間と成績との相関関係を、因果関係と同一視してはなりません。スマホの利用時間が長いということは、子どもが家庭(や学校)で非リア充だということでしかないと考えられます。リア充と好成績の正のスパイラルに入れない子どもが、学習時間を確保できず(あるいは学習から逃避して)、あいた時間でスマホなどを使っているにすぎないと考えるべきでしょう。