藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

大学×企業×NPO×附属学校連携による特別授業を実施しました

千葉大学大学院教育学研究科には実践的な授業が多くありますが、中でも特徴的なのが附属学校と連携した実践的な授業です。教育系の学部等をもつ国立大学には基本的に附属学校がありますが、多くは所在地が大学と離れた場所です。しかし、幸いなことに千葉大学の場合には、教育学部棟の隣に附属小学校と附属中学校があり、同じキャンパス内に附属幼稚園、少し離れますが同じ千葉市内に附属特別支援学校があります。

 

私が担当している実践的な授業は、「横断型授業づくり実践研究I」(前期)、「横断型授業づくり実践研究II」(後期)で、基本的に附属中学校の3年生徒対象の選択教科の時間に重ねて時間割を組んでいます。選択教科は今の学習指導要領では位置付けられていないのですが、千葉大学教育学部附属中学校では、研究的な意義のある時間として2年生及び3年生で、前期・後期それぞれ13時間程度の枠を設けており、各教員が発展的な内容の授業を実施しています。生徒は期ごとに選択して履修します。この枠は大学と附属学校との連携のためにも使われており、私を含め、何人かの教育学部教員が授業を担当したり、授業に協力したりしています。なお、近年は、継続的に授業を担当する大学教員には「教育学部特命教諭」を教育学部長から発令しています。

 

余談ですが、私はずっとこの選択授業に関わってきたので、教員免許更新講習も受けて免許を更新し、単独ででも選択教科の授業を担当できるようにし、「特命教諭」に発令してもらうつもりだったのですが、そのタイミングで校長になったので、今のところ単独での授業担当にも「特命教諭」発令にも至っていません。なお、初期に私が大学院生たちとともに選択数学の授業を行った成果は、書籍『教科書を飛び出した数学』丸善出版)にまとめられています。

 

大学院の実践的な授業ではこの選択教科の枠で授業を見てもらったり、授業づくりをしてもらったりしてきました。やり方は試行錯誤してきたのですが、今年度の「横断型授業づくり実践研究II」(後期)では、私が理事長をつとめるNPO法人企業教育研究会の協力を得て、大学院生がグループごとに企業と連携した授業づくりを行い、実際に選択教科の時間に授業をすることになりました。

 

ace-npo.org

 

授業づくりにおいては、今回は「企業と学ぶ! データ利活用やロボットプログラミン」をテーマとした選択社会科とすることとし、以下の企業の方々にご協力いただきました。それぞれ企業教育研究会と授業プログラムの開発・提供を行っておられますので、授業プログラムへのリンクも付けておきますので、教材提供や出前授業をご希望の学校関係の方はご参照ください。

 

 

大学院生たちには数名ずつグループに分かれてもらい、各企業が企業教育研究会とともに学校に提供している上記プログラムを中学校3年生向け2時間(50分×2回)にアレンジして授業を行ってもらうこととしました。授業担当グループ以外の大学院生は授業を見て(1月以降は教室に来る人数を減らし、授業の動画を授業後に見てもらうことにしました)、授業後に気づいたこと等を報告してもらいます。

 

各グループの大学院生は企業の担当の方とオンラインで何度も打ち合わせをさせていただき、創意工夫をして授業の準備をしてくれました。他のグループの授業アレンジから学んでもらうことも多かったようです。最初は内容を詰め込みすぎて授業時間が足りなくなることが多かったのですが、徐々に時間に見合った内容構成の工夫も上手にできるようになったようです。

 

日鉄ソリューションズの「K3Tunnel」のサイトにて、「【4】アレンジ例:オリジナルの課題に取り組む」として、今回のアレンジ例をご紹介いただいています。

 

k3tunnel.com

 

大学院生たちがそれぞれの専門分野をもちながら、専門を異にする人たちとともに授業を準備し、実施する機会は大変重要で、教員になった場合には校内外の人々との連携協力を進めることにつながるでしょうし、教育研究者を目指す場合には実践的な感覚をもった研究者となるための素地になるはずです。また、附属中学校の生徒は、作り込まれた授業を集中的に受けられることになります。このような貴重な機会に親身になって協力くださった協力企業の方々に、感謝しています。

 

【2022.3.18追記】

メルカリの mercari education のサイトでも、今回の取り組みをご紹介いただきました。

 

education.mercari.com