本日朝刊各紙で、埼玉県教育委員会も学校への携帯電話持ち込み禁止を進めるという報道がなされていました。先日、橋下大阪府知事の発言に関する私の考えを書きましたが、あらためて以下に記したいと思います。
1)公立小中学校での携帯電話原則持ち込み禁止の措置は、すでに多くの学校でなされており、今さら大きな話題にする必要はあまりない。地域によっては、電車やバスで通学する子どもがおり、連絡のために持たせたいという保護者がいるのは当然で、学校の許可を得てもたせる等の対応が必要であろう。また、小中学生の携帯電話利用に関する問題は基本的に家庭での利用の問題であるので、学校への持ち込み禁止が現在さまざまに指摘されている問題への解決につながるとは考えにくい。
2)公立高校での携帯電話校内使用禁止の措置については、基本的には支持できるものの、他方で慎重に検討される必要がある。授業中に授業と無関係に携帯電話を使用することはもちろん、休み時間に緊急性のないやりとりをすることは、基本的に禁止されてよいであろう。しかし、授業、部活、委員会等の活動で、休み時間に外部に連絡したり情報を得たりすることは必要でありうる。たとえば、企業や研究機関に生徒が訪問する授業や、新聞部・放送部の取材活動、文化祭実行委員会等の外部との交渉等で、生徒が携帯電話を活用することまで制限するのは行きすぎである。そして、高校は義務教育ではないのだから、各学校の校風や実情に合わせて方針を決め、生徒や保護者が選択すべきものなので、一律に規制をする必要はない。
3)学校への持ち込み禁止という話題は一般の人にわかりやすいためか大きく報じられるが、現在起こっている問題への対策としては以下のようなさまざまな対策を組み合わせることが必要であり、あまり単純に一つの解決策だけを強調すべきではない。
【技術・制度】
・携帯型インターネット端末に関する利用者登録の義務化
・サイト利用者に対する実効性のある成人確認(例:携帯電話による成人認証システムの導入)
・フィルタリングの改善(第三者機関が安全と認めたサイトの除外、年齢別段階設定、保護者による例外設定)
・18歳未満の者が利用する端末へのフィルタリング義務化
・保護者による利用時間制限、利用機能制限の充実
・携帯電話購入時のルールづくり義務づけ
・地域における常設型有害情報対策連絡協議会の設置
・関連企業・業界団体による教育貢献活動の推進(教材の開発・提供、ゲスト講師の派遣、最新情報の提供、店頭や広告を利用した啓発活動等)
【教育】
・携帯電話に関するメディアリテラシー教育を学習指導要領に明記
・携帯電話に関するメディアリテラシー教材・指導案の充実(一般の教員が大きな負担なく指導できるもの)
・異質な者とかかわる力を育成する教育の充実(ディベート教育、キャリア教育、異文化コミュニケーション教育等)
・各学校におけるケータイ・ポリシーの策定
・「親世代になるための準備教育」の推進
【福祉・地域活動】
・民生委員、児童委員、警察ボランティア等への研修機会提供
・ネットに頼らない青少年の居場所づくりの推進
・地域での学習会、シンポジウム等開催の推進
なお、先日ある週刊誌の記者からインタビューを受け、仮原稿が送られてきたのですが、私が言っていない言葉が多く付け足され、しかも私が橋下知事を揶揄する言い方をしたかのような表現が使われていたため、掲載をお断りしました。記者や副編集長と話をさせてもらったのですが、なぜこのようなことが起こったのかについての説明が曖昧で、納得のいくものではありませんでした。私はその週刊誌の発行元の会社とは長くさまざまな形でおつきあいしてきており、このような状況になり、大変残念です。子どもの問題についてマスメディアが取り上げてくださることは大変重要なことですし、私としては最大限のご協力をしたいと思いますが、コメントを捏造するようなやり方は強くお断りします。