藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

東京都青少年保護条例新改正案(携帯電話・インターネット関連)についての見解

 東京都が11月30日開会の都議会に、青少年保護条例の新たな改正案を提出します。この条例改正については3月に都議会で審議され、その際に私は、携帯電話・インターネット関連の部分について以下の見解を述べました。

http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2010/03/2-88a7.html

http://dfujikawa.cocolog-nifty.com/jugyo/2010/03/317-5bb0.html

 その後、総務省に青少年インターネットWGが設けられ、私は主査代理をつとめさせていただいております。これを含め、昨年施行された青少年インターネット環境整備法の見直しに向けて、国レベルでさまざまな議論が進んでいる状況です。こうした状況をふまえ、今回の新たな条例改正案の携帯電話・インターネット関連部分について、私の見解を以下に述べさせていただきます。

1.国レベルで青少年インターネット環境整備法を中心とした取り組みが進められている中で、携帯電話・インターネット関連に関して東京都が独自の規定を新たに設けることは、避けてほしいと考えます。今回の条例改正案を見ても、都が独自に取り組むべき点は皆無と考えられます。携帯電話・インターネット関連の問題は都道府県域を超えた問題であることが多いことも考え、独自の規定を設けるのでなく国に対して提案するというスタンスをとることが筋と考えます。

2.今回、「携帯電話端末等の推奨」として、端末のみでなく「機能」を推奨することが盛り込まれています。これは、3月の時点で私が、機能を推奨することは的外れで、問題は契約形態であるという意見を述べたことに、対応していただいたのだと考えています。しかしながら、「機能」を推奨するというと、いくつかの種類のフィルタリングについて、都が内容に踏み込んで是非を判断し、特定のフィルタリングのみを推奨することもありうることになってしまいます。年齢や発達段階に合わせた契約形態を携帯電話会社が推奨することは進めたいと私は考えますが、条例としては誤解を招かないようにしなければなりません。仮に端末や機能の推奨を行うとしても、たとえば、「ただし、機種や機能の開発・普及に際しては民間における自主的かつ主体的な取組を尊重することを旨とし、有害情報等からの青少年の保護のみに偏らず、青少年がインターネットを適切に活用する能力を育むことに配慮しなければならない。」というような文言を加え、拡大解釈を抑止することが不可欠です。

3.安易なフィルタリング非加入を抑えるすることは必要と考えますが、非加入の場合に理由書を提出させること、利用状況の閲覧を求めること等は不適切と考えます。理由書の提出は、保護者の選択に負荷をかける割には「○」をつけるだけの形骸化した状況につながりやすいと考えられます。利用状況の閲覧を推奨することは、家庭の問題に行政が過剰に立ち入ることと言えます。安易なフィルタリング非加入を抑えるには、非加入を希望する保護者・青少年に対して徹底したリスクの説明を行うことが筋だと考えます。

 行政による家庭等への過剰な介入を許すと読める部分がかなり削除されていること等、前回生じていた問題のいくつかは改善されています。しかし全体として、都が独自に携帯電話・インターネット関連の規定を新たに設ける必要性が私には理解できません。都議会において慎重な審議がなされることを望みます。