今年度より千葉大学大学院教育学研究科が改組となり、新たに学校教育科学専攻と教科教育科学専攻の2専攻体制となりました。
私は教科教育科学専攻の言語・社会系の担当となり、個人で担当する科目のほか、専攻必修科目の「教科教育科学特論I/II」を他の教員とともに担当しています。各教科・領域を俯瞰しつつ、学生が自分の教科について広い視野で考えられるようにしようという科目です。教科や専門の枠を超え、教員も学生も議論します。おそらく他の大学でもあまり例のない、挑戦的な授業だと考えています。
4月13日(水)の第1回では、鶴岡教授と藤川より授業全体を見通した問題提起を行いました。簡単なレジュメですが、藤川の資料を以下に掲載させていただきます。
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授業実践開発から見る教科教育科学(人文社会系の課題を中心に)
藤川大祐
・メディア論と教科教育の関係
・カナダの英語教育とメディアリテラシー
2.「教科専門」と諸学問
・中学校社会科の「教科に関する科目」は、日本史及び外国史、地理学(地誌を含む。)、「法律学、政治学」、「社会学、経済学」、「哲学、倫理学、宗教学」。一種免許の場合、各教科一単位以上、計二十単位を修得することとされている。(小学校免許については、「社会」としか定められていない。)
・たとえば、新学習指導要領の中学校社会科の内容に「民主政治の推進と,公正な世論の形成や国民の政治参加との関連について考えさせる」とあるが、政治学やメディア論を学ばなくても中学校社会科免許は取得できる。
・「学んでいないことを教える」ことを可能にする教科専門の指導はいかにして可能か。
3.「教科専門」に求められるもの(私見)
・背景学問のメタ的な見方(「○○学史」「○○哲学」等の視点、たとえば「国語学」とは何か)
・背景学問と社会(特に職業)との関係(テレビ局と日本語、多国籍企業社員にとっての英語等)
・背景学問におけるアウトリーチの検討(教養本、教養講座をどう見るか)
4.「教科教育学」そして「教科教育科学」に関して
・特定の教科が何であったかの研究は可能。しかし、今後どうあるべきかの研究はいかにして可能か。
・特定の教科にしか適用できない教科教育法とはどのようなものか。他の教科でも、似て非なることを扱っているのではないか。
・「背景学問の専門性」、「教科の専門性」、「新たな教科教育の創出」それぞれに飛躍がある。各教科の教科教育学には、こうした飛躍をどう扱うかが含まれるはず。
・個々の教科教育学を超えた、一般的な教科教育学、さらには教科教育科学がありうるか。目指されるべきか。