藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

子どもたちが「放射能がうつる」と差別された件の報道について

 4月13日付で毎日新聞「東日本大震災:「放射能怖い」福島からの避難児童に偏見」という記事を配信し、その後も共同通信記事を配信していて、いくつかの新聞でこのことが取り上げられています。  毎日新聞の記事の一部を引用します。  兄弟は3月中旬、市内の公園で遊んでいると、方言を耳にした地元の子供たちから「どこから来たの?」と聞かれた。兄弟が「福島から」と答えると、みな「放射線がうつる」「わー」と叫び、逃げていった。兄弟は泣きながら親類宅に戻り、両親らは相談。「嫌がる子供を我慢させてまで千葉にいる必要はない」と考え、福島市へ再び避難した。  「放射線がうつる」などという差別はあってはならないことであり、このような差別について報じることは必要なことと考えられます。  ただし、注意しなければならないのは、この出来事が起こったのは「3月中旬」ということです。大地震が起こったのは3月11日であり、3月中旬ということであれば地震が起きてから10日未満の状況だったことになります。震災後1ヶ月が経過した現在とは、状況が大きく異なっていました。  毎日新聞の記事は、見出しにもリードにも「3月中旬」という言葉がなく、本文をしっかり読まないとあたかもつい最近起きた出来事を報じているかのような誤解を与える記事だったと言えます。  さらに、あえて「3月中旬」を飛ばして報じるメディアも出てきました。本日4月15日(金)のテレビ朝日「やじマル」では、この件を報じたサンケイスポーツの記事を紹介していましたが、記事中の「3月中旬」という言葉に傍線を引かず、飛ばして読んでいたのです。意図的に「3月中旬」という情報を飛ばして報じたと言われても仕方がない状況です。いたずらに不安をあおる扱い方がなされていたと言わざるをえません。  先ほど、テレビ朝日のホームページから以下の意見を提出しました。テレビ朝日には真摯な対応を求めたいと考えます。  本日4月15日(金)の「やじマル」で、サンケイスポーツの記事を取り上げ、福島県から来た子どもたちが「放射能がうつる」と差別されたという件を報じておられました。この出来事は「3月中旬」のことと元の記事には書かれていましたが、「やじマル」ではあえて「3月中旬」ということを飛ばして紹介していました。大地震直後の混乱した状況での出来事を、あたかも大地震から1ヶ月が経過した現時点でのことと誤解されるような取り上げ方の意図を理解しかねます。むしろ「3月中旬」を強調し、慎重に受け止めることを促すべきではないでしょうか。風評被害を起こすような報道がなされないよう、ご対応をお願いいたします。