藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

麻布中学校1年生対象情報モラル教育の授業

 本日、東京・港区の私立麻布中学校1年生7クラスで、学生たちとともに情報モラル教育の授業(50分、1コマ)をしてきました。

 麻布中学校(と麻布高校)は私の出身校ということもあり、以前に情報モラル教育への協力を依頼されていました。1学年7クラスなので、少々大変ではあったのですが、クラスごとに授業をすることとなり、NPO法人企業教育研究会の学生スタッフたちと計7名で7クラスを担当し、補助のスタッフを含めて11名の大所帯で麻布中学校にうかがいました。

 今回の授業は、NPO法人企業教育研究会が、ソフトバンクモバイル及びNHKエデュケーショナルとともに進めているプロジェクト「考えよう、ケータイ」の一環として取り組みました。「考えよう、ケータイ」では、堀田龍也先生や宗我部義則先生とともに監修させていただいたNHKの番組「ブログ社会の落とし穴」等に含まれる10分ほどのドラマを使い、生徒たちに問題点等を考えてもらうものです。学校側と相談の結果、今回はこの中の「情報発信編」を基本とすることにしました。

 しかし、私立男子校で多くの公立中学校とは状況が異なる麻布中学校向けに、いくつかのアレンジを行うことにしました。具体的には以下の通りです。

・映像教材が女子がストーカーに遭う問題を強調しているので、不適切な情報発信から男子が被害に遭った事件例(暴走族の格好をまねした写真をプロフに掲載した中学生が暴走族に暴行された事件)を補助的に取り上げた。

・中1でメール中心に携帯電話を使っている生徒が多い状況をふまえて、サイトでのトラブルに加えて、メールでの発信でもトラブルが起きうること(送信先を間違える、端末を他の人に見られる等)を指摘した。

・生徒たちの知的好奇心に期待して、最近の事件事例をできるだけ罪名や関連の法律にふれて紹介した(威力業務妨害罪、決闘罪、侮辱罪等)。

・将来の情報利用に向けた意識喚起を考え、大学生等で生じている炎上等の社会的制裁の事例をいくつか示し、不用意な発信をすることへの注意を喚起するとともに、過剰な社会的制裁がなされるネット社会でよいのかとう問いかけをした。

 私は明示的に、「今日は、全国で実施しているプログラムをベースに、麻布向けのスペシャルの内容を加えて授業をします」と宣言して授業をしました。「スペシャル」ということを生徒たちは喜んでくれたようで、アレンジを加えた準備をしてよかったと思っています。

 私から見ると33年後輩にあたる中1の生徒たちは、とても反応がよく、映像教材の細かいところにもいろいろなことを言ってくれ、意見もどんどん出してくれました。学生たちも各クラスで反応がよく楽しかったと言っていました。1回だけの授業ではありますが、彼らが情報発信について考えるきっかけになってくれればと思っています。

 私たちは企業教育研究会で、全国の学校に教材を提供したり出前授業にうかがったりしています。基本的には全国共通のプログラムで実施していますが、今回のように時にはその学校に向けたアレンジをして教材や授業のレパートリーを広げることも重要です。今回はよい機会を与えていただきました。

追記 麻布中学校のホームページで今回の授業の様子が紹介されています。

http://www.azabu-jh.ed.jp/kinkyou/2011nendo/m1keitai/m1keitailesson.htm