藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

「天動説」を「学力低下」の象徴にするな

 昨年日本天文学会で報告された「小学校4~6年生の4割が天動説を信じている」という調査結果が、その後、「学力低下」の象徴のように言及されている。このことについて、1月25日付朝日新聞が、「天動説×と言い切れますか」という興味深い記事を載せている。

 「仮説実験授業」の創始者板倉聖宣さんの「習わなければ知らないのは当然」「こうした感動的なことは感動を伴って学ばなければだめ」といったコメントが紹介され、「子どもが知らないと嘆いている大人たちこそ、どれだけ理解しているのか心配です」という浪川幸彦名古屋大学教授のコメントも載っている。

 小学生時代に科学の本を読んで胸をときめかせた「かつての科学少年・科学少女」から見れば、小学生が天動説を信じているなど、とんでもないことに思えるであろう。だが、だからと言ってこのことを学力問題とつなげて見るのには飛躍がある。中学校では地動説にもとづく宇宙の学習が理科でなされるのであり、この問題は教育課程のあり方の問題ではありえても、子どもの学力の問題ではないはずだ。

 わかりやすい数字入りで調査結果が発表されると、その調査結果が都合よく使われることは、メディアでありがちなことである。「リサーチ・リテラシー」の発想で、数字にはむしろ警戒が必要である。