藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

地デジのアナログ変換再送信に関して

 本日の新聞各紙で、総務省地上デジタル放送移行後も、ケーブルテレビ(CATV)で地上デジタル放送をアナログに変換して再送信する措置を当面とる方針であることを報じている。CATVに加入している世帯では、2011年7月以降も、当面、従来のアナログ対応テレビやビデオデッキが使えることになる。CATV加入世帯にとっては、朗報だ。

 地上デジタル対応テレビを導入している世帯でも、2台目のテレビがアナログであったり、アナログ対応のビデオデッキが残っていたりすることは多い。それらの機器が当面使えるのは、資源を大切にするという観点からも望ましい。我が家にも、ソニーXビデオステーションというアナログ放送8チャンネルを約1週間全番組録画できる機械があって重宝しているが、これが当面使えるのは大変ありがたい。もちろんCATV会社には負担になるのだが、CATV加入促進にもつながるので、当面などと言わずに恒久的な措置としていただきたいと思う。

 こうなると、CATVがない地区はどうするのかという課題が残る。これを機に、インターネット、テレビ放送、そして緊急地震速報がすべて使える回線を全国に張り巡らすことを目指すべきではないか。電気は全国津々浦々に届いているのだから、その設備を有効に活用することが考えられてよい。

 他方、地上デジタル化にあたっては、電波の有効利用という大義名分があったはずであるが、アナログテレビで使っていた帯域がどのように使われ、一般の人々の生活にどのように寄与するかがまったく見えないことも、問題である。総務省は今後の電波利用計画を明示すべきであるし、郊外や過疎地や地下でワンセグを含む地上デジタル放送が完璧に受信できるようになるなど、デジタル化の恩恵をもっと広く届けるべきだ。

 昨年11月、私たちが行っている定例研究会「千葉授業づくり研究会」では、ブロードネットマックスの方にいらしていただき、こうした問題について議論した。CATVによるアナログ変換再送信の可能性についても、かなり突っ込んだ議論をさせていただいた。また、地上デジタル放送ではデータ変換に1~数秒のタイムラグが生じるために使い物にならない、緊急地震速報のあり方についても議論した。緊急地震速報については、CATV回線等を使った装置を普及させたり、地上デジタル放送画面にアナログデータの文字表示を可能にする等の措置がないと、使い物にならず、せっかくの取り組みが無駄になって多くの命が失われる恐れがある。

 また、この研究会では、地上デジタル放送返還後に学校でNHK教育テレビの視聴をどうするかということを議論した。学校の共聴設備がデジタル対応となり、全教室のテレビがデジタル対応になることが望ましいが、それだけの予算を国や自治体がつけてくれるとは考えにくい。そもそも、これまでのアナログ放送より大きな教育的意義が考えにくいのに、莫大な予算をつけるのは無理な話である。そこで私たちが考えた格安のNHKデジタル教育テレビ共聴プランは、以下の通りである(CATVによるアナログ変換がないものとして)。

 1.放送室に1台、地デジチューナー(もしくはレコーダー)を置き、チャンネルはNHKデジタル教育テレビに固定する。(3チャンネル同時放送等は考えず、メインのチャンネルに固定する。)

 2.放送室の地デジチューナーに、UHFアンテナを接続する。すでにあるものの調整で済めばそれでよく、UHFアンテナがない場合には放送室チューナー専用に安いものをできるだけ簡易にとりつける(受信さえできればよい)。

 3.放送室からは各教室に番組配信ができるようになっていることが多いので、地デジチューナーからアナログ出力して各教室に番組配信する。番組を録画して使う必要があれば、VHSのアナログデッキに録画する(そうすればダビング10などの制限がかからないので、再ダビング等も従来どおり行える)。

 このプランであれば、アンテナ、ケーブル、チューナーで1校あたり計数万円の支出を1回行えば、半ば恒久的にNHKデジタル教育テレビを従来とほぼ変わらない利便性で活用できることになる。

 このままいくと、地上デジタル放送移行は、歴史に残る大混乱に陥ってしまう。総務省も内閣も国会も、真剣に対応を検討してほしい。