藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

「メディアのめ」でメディアの基礎を学ぶ

 とある目的で書いた原稿なのですが、当初の目的では使われなくなったので、ここに掲載します。

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「メディアのめ」でメディアの基礎を学ぶ

                            千葉大学教育学部教授 藤川大祐

写真の撮り方、どう教える?

 20年前と現在の教育環境で大きく変わったことの一つに、写真利用の容易さがある。

 フィルム式カメラしかなかった時代には、写真の活用には費用も手間もかかり、日常の授業で手軽に使うことはできなかった。だが、デジタルカメラが普及した現在では、教師も児童生徒も日常的に写真を撮り、スクリーンやテレビ画面に映したり、紙にプリントアウトしたりして活用することができる。加工して資料の中に入れることも容易だ。タブレット端末等、カメラを内蔵した情報機器も多くなっており、児童生徒が1人1台カメラ機能のある端末を常時使うことさえ、現実的になってきた。

 デジタルカメラタブレット端末で写真を撮ることは、基本的に難しくない。大きい液晶画面で構図を確認でき、焦点や明るさは自動調整される。失敗したら撮り直し、気に入った写真だけを残せばよい。フィルム式カメラと比較すれば、撮影は飛躍的に易しくなった。

 しかし、それでもあえて、写真撮影について児童生徒に学んでほしいことがある。それは、「サイズ」や「アングル」で、写真が大きく異なるということだ。「サイズ」とはアップやルーズなど、どの範囲までを写真におさめるかということ。「アングル」はカメラを水平方向に向けるか、上方向や下方向に向けるか、ということ。

 たとえば、小学校低学年の児童が土に生えている小さな草の花を撮影しようとするとき、なんとなく上からルーズで撮影すると花の様子が伝わらないであろうが、水平に近いアングルで近くからアップで撮れば、花の様子が迫力をもって伝わる写真が撮れるだろう。

メディアの基礎を学ぶ「メディアのめ」

 この写真の撮り方のように、メディアとかかわるために知っておいたほうがよいことは、多くある。こうしたことを扱うための教材であまりよいものがなかったが、2012年4月よりNHK Eテレ(教育テレビ)で放映されている「メディアのめ」は、こうしたメディアに関する基礎を学べる番組だ。私はこの番組の番組委員をつとめており、多くの方に活用していただくことを願っている。

 「メディアのめ」の概要は、以下の通り。

放送 月曜日朝9:25~9:35、土曜日朝6:35~6:45 (原則として2週ずつリピート放送)

出演 池上彰、安保泰我

各回のテーマ(全20回)

  写真/音/ポップの言葉/新聞/パッケージ/統計・グラフ/ホームページ/雑誌/アニメーション/CM/ニュース/インタビューの編集/ドキュメンタリー/ドラマ撮影/ステレオタイプ/ケータイ(メール、ゲーム、危

険)/著作権/検索

 第1回では、「写真一枚で世界を切り取れ!」というタイトルで、サッカーの試合の一瞬を撮影した写真やイラクフセイン像が倒される状況を撮影した写真が取り上げられ、池上さんが中学生の安保君と、「サイズ」を中心に写真について考えていく。

 番組ホームページでは、放送済みの回を動画で視聴できるほか、関連の素材等も掲載されている。メディアを活用する能力は現代を生きる力であるが、これまでは適切な教材があまりなかった。学校の状況に合わせて、この番組が活用されることを願っている。