藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

地震の後、学校で考えてほしいこと

 このたびの地震では、直接大きな被害があった地域の方々はもちろんですが、全国の人々が大変なショックを受け、いろいろなことを考えていると思います。

 もちろん、子どもたちもさまざまなことを感じているはずです。身近で直接的な被害がなかったとしても、テレビで流れ続ける地震のニュースを見て、大きな不安を覚えていると考える必要があります。

 以下、私なりに明日3月14日(月)から学校で取り組んでほしいことを整理しました。教員やスクールカウンセラーの方々に参考にしていただければ幸いです。また、修正やつけたし等のご意見をいただければ、ありがたいです。(主に、直接的な被害がなかった地域の学校を想定して書いています。学校段階は小中高を広く想定しています。)

1.大人への不信を招かないように

 保護者や教師などの大人は、地震報道を見て不安がる子どもに、不安を解消しようとして「大丈夫」「心配ない」と言うかもしれません。学校では、ともすると何事もなかったように、地震の話題にふれずに授業を進めようとするかもしれません。

 しかし、子どもたちが不安になることは当然で、大人がその不安を否定するかのような対応をすることは、不安をわかってくれないという不信を招くことになりかねません。大人への不信が大きくなれば、体調不良を大人に言えない、ストレスから暴力等のトラブルにつながる等、新たな問題につながる可能性が大きくなります。

 学校では、教師が自分の言葉で、地震について感じたことや考えたことを話してあげてほしいと思います。大きな揺れやたびたび訪れる余震で不安に思ったこと、自分の家族や学校の児童生徒について考えたこと、助けを求めている人がいても自分では直接できることがないのではないかという無力感、自分たちの生活の今後への不安等、率直に話していただけば、子どもたちは教師に不信を抱くことはないでしょう。できれば、今自分にできることをどのように考えているのかを、悩みを含めて話していただけるとよいと思います。

 そして、子どもたちの思いをたくさん話せるようにしてほしいと考えます。少人数でそれぞれが話をし、全体でも話し、インフォーマルな休み時間等に話したい子どもが教師と話すといったことができるようにしてほしいです。応急処置としては、不安を聴いてもらえるようにするということが必要だと考えます。

2.自分たちができること

 被災地の悲惨な状況が報じられているのを見て、自分たちにも何かできることはないのかと考えたくなるのは当然です。もちろん、救助を求めている人を助けにいくことも、被災地に差し入れをもっていくことも、子どもたちには(一般の大人たちにも)できません。

 しかし、全く何もできないわけではありません。今、いろいろな人が知恵をしぼり、自分たちでできることは何かを話し合い、できることを進めようとしているということを伝え、一緒にできることをやろうと考えてほしいです。

 被災地以外ですぐにできることは、節電です。原発の停止などもあり、電力供給量が減って首都圏などで大規模な停電が必要になる可能性が出てきました。しかし、停電が起これば、病院の医療機器が使えなくなることをはじめ、さまざまな問題が生じます。みんなで節電をすることで、停電を回避することができます。量に限度はあるものの、西日本からも送電は可能です。単純に、無駄な電気を使わないことが、日本の多くの人にできる貢献です。

 節電の取り組みは、インターネットのTwitter等で話題となり、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」になぞらえて「ヤシマ作戦」と名付けられ、広がっています(関連記事)。この作戦との関連はわからないものの、電力消費量が予想よりも少なくなり、当面の停電は免れています。

 それ以外で子どもたちにできることとしたら、自分やまわりの人の心身の健康を守ることや、しっかり勉強して将来何らかの貢献ができるようになることなのだろうと思います。食事をとり、運動をし、規則正しい生活をして体調の維持につとめること、家族や友達にやさしくし、互いにおだやかな気持ちで過ごせるようにすることが、周囲からすれば最大の貢献かもしれません。しかし、自分の欲求を抑えつけるだけではまずいので、好きなDVDを見たりゲームで遊んだりすること等、一時的にでも楽しい思いになることもよいことです(だからこそ、たとえばNHK教育テレビが通常番組を放送する等の対応が望まれます)。そして、この地震からの復興には時間がかかる上、自然災害に向き合うことは長期的に必要なのですから、未熟な今できることだけでなく、大人になってできるようになることのために今は学ぶということも重要です。

3.世界からの応援を見る

 テレビでは今のところ惨状ばかりが報じられていますが、ネットでは世界からの応援や賞賛が頻繁に話題になっています。また、日本の中での誇らしい話題が共有されています。たとえば次のようなサイトを学校で子どもたちと一緒に読み、話し合ってはいかがでしょうか。

がんがれ日本!(google docs版)

【prayforjapan】世界から届いた日本への祈り

4.教職員自身のケアも

 この数日、教職員自身が大きなショックを受け、さまざまなことを考えて過ごしておられると思います。11日(金)に児童生徒を帰したり学校で帰宅困難者を受け入れたりして、対応にあたられた方も多いでしょう。ストレスや疲労を抱えておられる方が多いと思います。

 教職員は、自分たちが抱えているストレスや疲労を後回しにしてしまいがちですが、それで体調を崩してしまってはいけません。互いに不安な思いを共有したり、できることを話し合ったりして、自分たちのケアを決して忘れないでください。教職員集団が元気で、子どもと一緒にいられるということが、教職員の基本的な責任です。

(以上)

追記 町田智雄さんのブログの記事「3月14日、教師から子どもへ」に、とても参考になる内容が盛り込まれています。ぜひお読みください。