今年度、私の研究室では、千葉大学教育学部附属中学校にて、3年生選択数学の1クラスとして「社会とつながる数学」という半年間の授業を実施しています。数学史や数学の社会への応用の話題を取り上げつつ、ギリシア時代の数学を中心にしっかりと数学の活動を生徒たちにやってもらおうというものです。授業内容とはやや独立に、読み物としての授業通信を発行し、配布しています。今年度の選択生徒は9名で、全員が熱心に参加してくれています。
これまでの内容は以下の通りです。
第1回 オリエンテーション(クラス分け)
第2回 正方形の対角線
第4回 ピタゴラスと整数
第5回 音律と数学(1)
第6回 音律と数学(2)
第7回 素数と暗号(1)
第8回 素数と暗号(2)
第4回までは、ギリシア時代の数学史にふれつつ、無理数がタブーだった話題、ルート2が無理数であることの背理法による証明、格子点に正方形を描く作業から入る三平方の定理の証明等を扱いました。
第5回からは社会との関連を多く盛り込んでいます。第5回・第6回ではピタゴラス音律、純正律、平均律が数学的にどのように考えられるかを、音楽科の学生等にも来てもらって、楽器を演奏しながら扱いました。音の振動数比を単純な整数比とする純正律では和音がにごりなくきれいに響くこと、半音をすべて1:2^(1/12)の比率にしている純正律では転調をしやすいことを、実際の音を聴かせつつ扱っています(転調が効果的に使われている例としては、木村カエラ「Butterfly」を取り上げました)。なお、2^(1/12)は近いと思われる値を生徒に言わせてエクセルで12乗してみることの繰り返しで、近似値を求め、その上で式を入れて計算する方法を教えました(必要に応じて情報機器を活用したいと考えています)。
第7回では素数の定義を確認した後(生徒に定義を考えさせ、-3、0、1等にも問題なく該当するかを検証しつつ定義を修正しました)、1000までの自然数を記した表を使ってエラトステネスのふるいで1000以下の素数を求める活動をしてもらいました。その上で、第7回では素数の性質(桁の多い2つの素数の積を求めることは容易だが、その積を素因数分解することは非常に困難)が現代社会で活用されている例として、RSA暗号の原理を紹介しました。
RSA暗号の原理をどのように紹介したかについては、別記事で書きたいと思います。