藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

教科教育科学特論II

 千葉大学大学院教育科学研究科が今年度から改組となり、2専攻となりました。私は教科教育科学専攻の担当となり、専攻必修科目「教科教育科学特論I/II」を、鶴岡義彦教授、金本正武教授とともにコーディネーターの立場で担当しています。前期の「教科教育科学特論I」については、4月にブログに記事を書いております。さまざまな教科等を専門とする学生が一同に会し、活発な議論をする授業で、新たな専攻にふさわしい挑戦的な授業と考えています。

  「教科教育科学特論I」の資料

 去る10月5日(水)より、今年度は後期開講の「教科教育科学特論II」が始まりました。19時40分~21時10分という夜の7限の時間帯にもかかわらず、前期と同程度の53名の学生が出席し、活気ある授業となることを予感する状況です。夜間の授業なので、昼間とはまた少々違った趣もあるかなと期待しています。

 今期の「教科教育科学特論II」では、理数技術系あるいは芸術系の教科の担当教員からの問題提起が続きます。以下に私が初回の授業で話した際の資料を掲載しておきます。

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授業実践開発から見る教科教育科学(自然科学系、芸術の課題を中心に)

                                           藤川大祐

1.附属中学校「社会とつながる数学」「社会を読み解く数学」から

ギリシャ時代の状況をふまえて、「素数」「証明」等を扱う。

・「音律と数学」。音楽のことも、数学のことも、思い切りやれないか。(さらには理科も)

・因果と相関の違いもふまえずに、新聞記事が読めるか。

つるかめ算は、表計算ソフトを使えば一瞬で答えが出るのだが…。

・演劇で算数、ダンスで理科等の取り組みもあります。

2.「教科専門」と諸学問(理科にあてはめてみると)

・中学校理科の「教科に関する科目」は、物理学、物理学実験(コンピュータ活用も含む)、化学、化学実験(コンピュータ活用も含む)、生物学、生物学実験(コンピュータ活用も含む)、地学、地学実験(コンピュータ活用も含む)。一種免許の場合、各教科一単位以上、計二十単位を修得することとされている。(小学校免許については、「理科」としか定められていない。)

・物理、化学、生物、地学の4領域について5単位ずつ履修したとして、広範な中学校理科の範囲を指導できるのか。

・「学んでいないことを教える」ことを可能にする教科専門の指導はいかにして可能か。

3.「教科専門」に求められるもの(例を替えて再掲)

・背景学問のメタ的な見方(「○○学史」「○○哲学」等の視点)

・背景学問と社会(特に職業)との関係(研究者や技術者の仕事、芸術関連の仕事等)

・背景学問におけるアウトリーチの検討(サイエンスコミュニケーション、芸術のアウトリーチ

4.「教科教育学」そして「教科教育科学」に関して(再掲、一部加筆)

・特定の教科が何であったかの研究は可能。しかし、今後どうあるべきかの研究はいかにして可能か。

・特定の教科にしか適用できない教科教育法とはどのようなものか。他の教科でも、似て非なることを扱っているのではないか。

・「背景学問の専門性」、「教科の専門性」、「新たな教科教育の創出」それぞれに飛躍がある。各教科の教科教育学には、こうした飛躍をどう扱うかが含まれるはず。

・個々の教科教育学を超えた、一般的な教科教育学、さらには教科教育科学がありうるか。目指されるべきか。

・学問や技術の革新を、教科教育の改変へとどのようにつなげるのか。