藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

日本PTA全国協議会のネット利用調査について

 本日6月17日付の毎日新聞、「インターネット:小5、中2が経験率で保護者を上回る」という記事が掲載されている。  これは、日本PTA全国協議会が小学校5年生・中学校2年生とその保護者に行ったアンケートの結果が発表されたものを受けての記事だ。  この記事には私のコメントも掲載されているが、子どものインターネット利用経験率が高いのは学校の授業で扱われているからで、当然のことである。佐世保の同級生殺人事件があって子どものインターネット利用についての関心が高まっている中、こうしたアンケート結果を「ネットを巡る親子の意識の隔たりや、親の目が届きにくい利用実態が浮き彫りになった」と結論づけるのは誤解を招く書き方である。  同じ毎日新聞には、「見せたくない番組:小5は『クレヨンしんちゃん』トップ」という記事も掲載されている。これも、日本PTA全国協議会のアンケート結果を受けての記事だ。この「見せたくない番組」等のアンケートは以前から繰り返し行われているが、常に『クレヨンしんちゃん』が上位であり、回答する側にも「見せたくない番組」と言えば『クレヨンしんちゃん』という連想が働いているように思う。  日本PTA全国協議会の方々には以前から申し上げているが、こうしたアンケートで『クレヨンしんちゃん』やインターネットを告発しようとすることでなく、学校におけるメディアリテラシー教育の実態を調査し、より効果的なメディアリテラシー教育のあり方について提言することが必要ではないか。時代の変化とともにメディア状況は変化していく。子どもをメディアから隔離するのでなく、賢くつきあえるようにしていくことが重要であるはずだ。「PTA」の「T」は教師なのだから、教師のメディアリテラシー教育を後押しすることが本来の活動であろう。  私がコメントしたように、今回の日本PTA全国協議会のアンケート結果について、「この結果を佐世保の(小6同級生殺害)事件と結びつけて『不適切なネット利用が広がっている』と考えるのはまずい」。メディア関係者が冷静に受け取っていただくことを切に願う。