藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

流山市のいじめ再発防止策公表に関して、報道機関に取材してほしいこと

昨日3月9日、流山市教育委員会が「いじめ重大事態の調査結果を受けた再発防止策」を公表しました。

▽いじめ重大事態の再発防止策の公表について(流山市ホームページ)
https://www.city.nagareyama.chiba.jp/1000008/1009881/1029980.html

また、千葉日報の記事( https://www.chibanippo.co.jp/news/national/771064 )によると、これに合わせて、昨年8月に流山市いじめ対策調査会が出した重大事態報告書が報道機関向けに公開されたようです。

公表された再発防止策には、教育委員会の体制強化、いじめを防止するための取組、いじめの早期発見と適切な対処のための取組、再発防止策の確実な実現のために、というように4項目にわたってさまざまな策が示されています。こうした取り組みが進められることは望ましいと思われますが、重大事態への対応についてどのように反省をし、どのように変えようとしているのかが全く読み取れません。

私はこれまで本ブログの中で、流山市教育委員会が深刻ないじめ事案と向き合わず法令等に違反した対応を続けてきた体質を問題にしてきました。この体質が変わることを期待してよいのかを考えるためにも、今回調査報告書が公表された案件について、以下の点が明らかになる必要があると考えます。報道機関各位におかれましては、流山市教育委員会の発表を一方的に流すのでなく、こうした点について取材をし、流山市教育委員会の対応を検証していただきたいと考えます。

 

1.被害者側への説明等について

1)いじめ防止対策推進法第28条第2項は、重大事態の調査がなされた場合に、被害者側に事実関係その他必要な情報を適切に提供することを定めています。また、文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、事前に説明した方針に沿って被害者側に調査結果を説明することが記されています。本件について、被害者側にどのような形で情報提供をしていたのでしょうか。それは適切であったのでしょうか。

2)上記ガイドラインでは、「被害児童生徒・保護者に寄り添いながら対応することを第一とし、信頼関係を構築すること」としています。本件について、被害者側との信頼関係構築のために、どのようなことがなされたのでしょうか。

3)上記ガイドラインでは、調査主体、調査事項・調査対象、調査方法、調査結果の提供等について、被害者側に説明すべきこととしています。本件について、新たな調査会が調査を行うにあたり、被害者側にいつどのようにこうした点が説明されたのでしょうか。

4)上記ガイドラインでは、調査結果の公表や公表の方法等については、被害者側の意向等を総合的に勘案して適切に判断することとされています。今回の公表についてはどのような要素をもとに報道機関に公表するという判断がなされたのでしょうか。

 

2.担当者等への懲戒処分の要否の検討について

1)上記ガイドラインでは、法律や基本方針等に照らして重大な過失等が指摘されている場合には、懲戒処分等の要否を検討すべきことが書かれています。重大事態としての対応を怠っていたという明らかに法律違反の対応があったのですが、担当者等の懲戒処分の要否は検討されたのでしょうか。検討されていないとすれば、重大事態としての対応を怠っていたことは「重大な過失等」に当たらないと判断されたということになりますが、なぜ重大事態としての対応を怠っていたことが「重大な過失等」にならないと判断されたのでしょうか。