教育新聞で毎月1回の連載コラムを書かせていただくようになってから、何年になるでしょうか。毎回、編集部からお題をいただき、数日中に原稿を書きます。ともかくお題をいただいたら、自分の知識を総動員しつつ、関連しそうなものを短時間で効率よく調べて、自分なりの視点を入れて問題について論じなければなりません。時間がないときには本当に厳しい仕事なのですが、出力する機会を与えていただき、そのために調べて考えるというのは勉強になり、ありがたいです。
本日、最新のコラムが公開されました。
今回は、文部科学省の「『教師不足』に関する実態調査」について書いています。これは、正規採用の教員が不足しているという話ではなく、臨時的任用教員の確保ができないということに関する調査です。報道でも多く取り上げられていて(例えば、この記事)、ご覧になった方も多いと思います。
この問題については、教育新聞の記事で詳しく報じられていて、文部科学省の担当者の説明が、以下のように記されています。
正規教員と臨時的任用教員の比率について、文科省では「正規教員が全体の9割弱を占めるという状態は、ここ数年、大きな変化はない。臨時的任用教員が相対的に増えているわけではない」(初等中等教育局財務課)と説明している。
ここで述べられていることに、間違いはありません。たしかに、ここ数年で見れば、臨時的任用教員の割合は横ばいです。しかし、臨時的任用教員の確保ができないという問題は、ここ数年で始まったことではありません。であれば、もっと前の状況と比較しなければ、「教師不足」の要因を捉えることはできないはずです。私は教育学部の仕事で臨時的任用教員の数の推移を調べたことがあったので、もっと長期で見れば臨時的任用教員の数が激増していることを知っていました。
今回あらためて、平成13(2001)年度以降約20年間の正規教員と臨時的任用教員の数を調べました。これは、文部科学省の「学校基本調査」のデータを拾うだけですので、多少の手間がかかるだけで容易にできることです。この20年間で、臨時的任用教員の数が1.7〜2倍程度に増えていることが確認できました。
臨時的任用教員は基本的に1年契約ですし、初任者研修等もありません。ですから、臨時的任用教員でもよいから(フルタイムの)教員をやりたい、そしてやれるという人は限られます。この20年間で非正規の臨時的任用教員を大幅に増やしたために、条件に合う人がほとんど臨時的任用教員になってしまうという状況が生じてしまったものと考えられます。「教師不足」を生み出した直接の原因は、非正規教員への過剰な依存だと言えます。
この点について、文部科学省も報道各社も、認識が不足していると考えています。詳しいデータは教育新聞のコラムで示しています。ぜひご確認いただき、非正規教員から正規教員への移行を進めてほしいと思います。