藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

教員の残業代の問題は、公立学校でこそ「是正」が必要だ

文部科学省が国立大学の附属学校で教員に対する残業代の未払いの状況について調査し、24法人で未払いがあったこと等が報じられています

 

公立学校の教員には給特法の規定があり、4%の「教職調整額」が支払われる代わりに残業代が支給されないことになっています。国立の附属学校もかつては給特法の規定の適用対象でしたが、2004年の法人化以降、給特法が適用されないこととなり、時間外労働にはその時間数に応じた残業代の支給が必要となっていました。しかし、時間外労働に合わせた残業代を支給することができていなかった法人で、労働基準監督署からの是正勧告を受ける等の事態がこのところ目立って生じていました。

 

今回、文部科学省が国立大学に調査を行い、その調査結果を発表したことの意味は大きいと考えます。これまで、文部科学省は国立大学の附属学校での残業代の支払いについて、強く注意を促すことはなかったように思います。しかし、今回調査結果を発表したのですから、今後は附属学校での残業代支払いを適切に行うよう促していくことになるはずです。ということは、教員の労働時間を適切に管理し、必要な残業代を出すことが可能だということが前提になります。附属学校が残業代支払いのモデルになるということです。一般に国立大学の財政事情は厳しいですから、残業代を多く支払うことはできず、必然的に業務見直しが進み、教員の勤務時間がある程度のところでおさまるようになることが期待できます。

 

当然ですが、教員の残業代問題の本丸は、公立学校です。教員の多数を占める公立学校で、給特法が適用されて実質的に残業し放題の状況があることは、教員の長時間労働の放置につながり、教職のイメージの悪化、ひいては教員志望者の減少につながっています。公立学校が国立大学の附属学校にならって、適切に教員の残業を管理し、抑制することが求められていくのではないでしょうか。

 

そうなれば、給特法を廃止し、公立学校においても、教員の残業時間に応じて残業代を支給する道が見えてくるはずです。そうなればサービス残業が増えるのではないか等の心配はあるかもしれませんが、まずは残業代を通して残業の状況を可視化することが大きいと思います。文部科学省にはぜひ、今回の国立附属学校に関する発表を、公立学校の教員の働き方の「是正」につなげてほしいと思います。

 

なお、私立学校にも給特法は適用されません。もし私立学校が適切な対応をしていないとすると、今後、私立学校にも労働基準監督署からの是正勧告が増えていくこともあるのかもしれません。

 

www.yomiuri.co.jp