発売されたばかりの遠藤洋路『みんなの「今」を幸せにする学校』(時事通信社)が届いたので、一気に読みました。
遠藤さんは、熊本市教育長。元官僚で、若くして退職されて会社を起こし、そして熊本市教育長に就任された方であることをこの本で初めて知りました。これまで関わらせていただく機会はなく、遠藤さんのことはほとんど知りませんでした。
しかし、この本を読んで、「そうなんだよな」「なるほど、そういう手があったか」などと、うなずくところばかりでした。これまで遠藤さんのお話を聞く機会がなかったことが残念だとさえ思いました。
OECDが掲げるウェルビーイングやエージェンシーの受け取り方も、学校が民主主義の担い手を育てる場所であり今は世界的に見れば民主主義の危機にあるという問題意識も、ICTの普及を教員→特別支援教育→全児童生徒の順で進めるという考え方も、働き方改革において教員が子どもと向き合わない時間も大切だということも、教育委員会と教職員との間に一定の緊張関係が必要だということも、すべて納得です。私自身、ここ数年、こうしたことがらに関心を持って、いじめ問題への対応、学校運営、教育行政等に関わってきました。私なりにいろいろな文章を書いてきましたし、研究的に取り組んできたこともあります。しかし、遠藤さんほどに具体的なアクションにできてはいなかったなと思わされました。
先日、熊本日日新聞の取材を受け、熊本市が、不登校の統計といじめの統計との間のギャップを埋めるべく、不登校の理由としていじめが挙げられているものの確認を進めようとしているという話を知りました。このことも、本の中に詳しく書かれていました。パンドラの箱を開けてでもいじめによる不登校を正確に把握したいという姿勢に強く共感します。
ということで、遠藤洋路『みんなの「今」を幸せにする学校』(時事通信社)をここに勝手に推薦させていただきます。今の学校教育に関心をお持ちの方はぜひ読んでいただきたいですし、全国の教育委員会や学校がこの本を参考にして自分たちには何ができるかを考えてほしいと願います。