6月18日(土)、私たちの研究室、NPO等が主催する研究会である「千葉授業づくり研究会」が第150回となる節目となる回を開催しましたた。講師に『「発達障害」とされる外国人の子どもたち』の著者である金春喜さんをお招きし、外国から来た児童生徒の教育に関して濃密な話を聞かせていただき、参加者でディスカッションを行いました。
「発達障害」とされる外国人の子どもたち――フィリピンから来日したきょうだいをめぐる、10人の大人たちの語り | 金 春喜 |本 | 通販 | Amazon
この書籍のタイトルに示されているように、外国から来た児童生徒が発達障害として扱われるケースが日本で育った児童生徒よりも明らかに高い割合となっています。手厚い教育を受けさせようとする配慮等から、発達障害には該当しないと考えられながら発達障害として扱われるケースもあるようです。金春喜さんは、京都大学大学院でこの問題について研究し、修士論文の成果を書籍として発表されています。
現在はハフポスト日本版ニュースエディターとして活躍されている金さんは、パワーポイント72枚にわたる資料を作成し、緻密に丁寧に、ご自身が研究されたり取材をされたりした内容を中心に、外国から来た児童生徒の教育についての問題を話してくださいました。
金春喜さんがこの問題を取り上げられるまで、外国から来た児童生徒が発達障害として扱われている事例は、外国人でかつ発達障害という二つのカテゴリーでのマイノリティの問題として考えられていたそうです。しかし、金春喜さんの書籍が出て以降、「日本語指導が必要」な児童生徒の特別支援学級在籍率が、児童生徒全体の1.4倍になることが明らかになるなど、外国から来た児童生徒が発達障害に該当しないにもかかわらず発達障害として扱われている場合が多いことが注目されるようになっています。
この問題の背景には、外国から来た児童生徒が日本の学校に在籍しても、日本語指導等の体制があまりにも脆弱であり、特別支援教育の対象となった方が手厚い教育が受けられるように見えてしまうということがあるようです。ただ、短期的には特別支援教育で救われることがあっても、進学や就職を考えたときに、選択肢が狭まったり、潜在的な能力をあまり活かせなかったりすることになりかねません。金春喜さんのお話では千葉県は特に小中高での日本語教育担当スタッフの配置が少ないとのことですので、千葉県においてもぜひ改善を進めていただきたいと思います。
政府としても小中高での外国人児童生徒への日本語教育の充実を進める方針はあるようです。今後コロナが落ち着けば、外国から多くの子どもが日本にやってくることが考えられますので、ぜひ着実に外国から来た児童生徒への支援体制を整えてほしいと思います。
もちろん、外国から来た児童生徒への支援体制の充実は、多忙を極める教員たちの負担を増やす方向で進めることはできません。日本語指導スタッフの増員は当然として、外国から来た児童生徒が日本語や日本についての知識をあまり使わなくても中学校や高校を卒業できるようにする制度改革を行う等の検討を進め、外国から来た児童生徒がむしろ国際性を強みにして活躍しやすくなるような改革を行う必要があるのではないでしょうか。