藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

18歳成人制スタートであらためて注目したい消費者トラブル問題

今年4月から、成人年齢が引き下げられ、18歳から成人となります。当事者たちが特に望んだわけではないのに、高校生なら多くの人が卒業前に「大人」ということになってしまいます。酒やタバコは20歳以上でないと認められない一方で、契約については一人前となります。

 

そこで気になるのが、契約上のトラブルです。民法では、未成年者が契約をするには法定代理人の同意を得なければならず、同意を得ないでなされた契約は本人や法定代理人が取り消せることが定められています。ですから、未成年であれば、自分で高額の商品やサービスの契約をしてしまっても、取り消せる可能性がありました。4月からは、18歳・19歳の人にこの規定が適用されなくなり、自分で契約をしたらいかに自分が未熟だからといっても取り消せないことになります。

 

詐欺や悪徳商法をしようとしている人は、当然、18歳・19歳をターゲットにするでしょう。国民生活センターのホームページには、「18歳・19歳に気を付けてほしい消費者トラブル 最新10選」という記事があり、大変参考になります。

 

www.kokusen.go.jp

 

特に、以下の「最新10選」には注目したいです。

 

18歳・19歳に気を付けてほしい消費者トラブル 最新10選

  1. 副業・情報商材やマルチなどの"もうけ話"トラブル
  2. エステや美容医療などの"美容関連"トラブル
  3. 健康食品や化粧品などの"定期購入"トラブル
  4. 誇大な広告や知り合った相手からの勧誘など"SNSきっかけ"トラブル
  5. 出会い系サイトやマッチングアプリ"出会い系"トラブル
  6. デート商法などの"異性・恋愛関連"トラブル
  7. 就活商法やオーディション商法などの"仕事関連"トラブル
  8. 賃貸住宅や電力の契約など"新生活関連"トラブル
  9. 消費者金融からの借り入れやクレジットカードなどの"借金・クレカ"トラブル
  10. スマホやネット回線などの"通信契約"トラブル

 

美容関連や定期購入のトラブルは、「無料」「初回500円」などの表示がある場合に、初回だけの申し込みのつもりが実際には定期契約になっていて、2回目以降の料金は高額になっていて、解約も容易にできないというようなものがあるようです。このような紛らわしい契約手法について知っておくことがあるかないかで、トラブルに巻き込まれる可能性が大きく変わってくるのではないでしょうか。

 

気をつけなければならないのは、18歳未満の人でも、自分が18歳以上であると偽った場合等においては、契約の取り消しが困難になるということです。

 

民法の規定を確認しておきましょう。

 

(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

 

このように、民法第5条第2項において、未成年者が法定代理人の同意を得ずになされた法律行為については、取り消すことができると定められています。このことから、未成年者が保護者に無断で行った契約は取り消すことが可能ということになるわけです。
 
ただし、取り消しが認められない場合もあります。たとえば以下の場合です。
 
・小遣い等の場合
 民法第5条第3項で、「目的を定めないで処分を許した財産を処分するとき」は未成年が自由に処分できることが定められています。これはすなわち、保護者が未成年者に対して自由に使ってよいとして小遣いを与えた場合のことと言えます。
 
・詐術を用いた場合
 以下の民法第21条に定められているように、法律行為をする能力が制限されている者が行為能力があることを信じさせるために詐術をした場合には、取り消しができません。すなわち、未成年者が成年者のふりをして契約を無断で行った場合には、取り消しができないということになります。
 
制限行為能力者の詐術)
第二十一条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
 
こうしたことを踏まえると、18歳・19歳だけではなく、18歳未満でも契約の際に必ずしもいつも契約取り消しができるわけではなく、注意が必要だということがわかります。
 
子どもたちが成長していく過程で、契約についてよく理解しておくことは大変重要です。18歳成人制スタートを機に、こうした学習の重要性をあらためて認識しておければと思います。