藤川大祐 授業づくりと教育研究のページ

藤川大祐のブログです。千葉大学教育学部教授(教育方法学、授業実践開発)。プロフィールは「このブログについて」をご覧ください。

「オタク力」への注目で、教育のパラダイムを変えられるか

ここ数年、「オタク力」を研究テーマに掲げています。そもそもは、院生との学習会での議論がきっかけで、数学が苦手な中学生に対して、数学の学力をつけさせようとただ努力するのでは難しく、まずは好きなもので力を発揮してもらい、その好きなものに取り組むことで培った力を数学に活かすというのはできないものか、という話になりました。好きなものに取り組むことで得られる力を「オタク力」と呼ぶこととし、まず「オタク力」を伸ばし、それを活かして学力を伸ばすという成長の過程を、「オタク型成長曲線」と呼ぶことにしました。

 

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このアイデア論文にまとめ、日本教育工学会全国大会でも発表しました。オンライン開催の学会でしたが、「オタク力」への着目に興味を持ってくださった方々が何人かいて、「オタク力」研究チームが結成されました。そして、チームで「オタク力」尺度の研究や企業等の方への「オタク力」に関するインタビュー研究等を進めています。

 

最近でも、毎日新聞(2022年2月10日)に、「あの人の笑顔が元気の源? 「推し活」がメンタルヘルスに良い理由」という記事が掲載されていました。メンタルヘルスが低下している人は自分に意識が向きがちだが、「推し活」をすると意識が自分の外側にある「推し」に向いて、自分への注目を軽減できるといいます。また、「推し活」によって活動的になり、行動が活性化され、つらい気持ちが楽になるということもあるとのこと。「オタク力」にもつながる話だと思います。

 

学校文化の中で「オタク」は差別・排斥されがちであったと考えられますが、近年は「オタク」であることを自ら表明する人が多くなっていて状況は変わりつつあると思います。この状況をさらに進めて、「オタク」であることが強みになるように教育のパラダイムを変えるコトガできるのではないかと、それなりに本気で考えています。

 

私は1980年前後からアイドルなどのJポップを愛好したり、1990年前後からテレビドラマにハマってきたりしました。最近では、ソニー・ミュージックと授業づくりの縁があったことからデビュー前から乃木坂46を応援し、そこからAKB48欅坂46改め櫻坂46、そして「けやき坂46」改め日向坂46なども応援するようになりました。テレビドラマも主要なものはほとんど見ています。アイドルオタクとかドラマオタクであることで、教育研究にも多くのヒントを得ているのですが、そうしたことを書くと長くなるので、今回はこの辺りで。

 

「オタク力」研究については、3月19日・20日にオンラインで開催される日本教育工学会全国大会で、私たちの研究グループから2件の発表がありますので、ご関心をお持ちの方、ぜひご参加ください。

 

opac.ll.chiba-u.jp